子どもの誕生日が集中する時期は出費が増えてつらい…5人の子どもに対する「お金の使い方の困難」

AI要約

低所得家庭の子どもたちには体験格差があり、約3人に1人が体験ゼロの状況がある。

家庭の経済状況が遊びや学びの機会に影響を与え、子どもたちが異なる体験をすることが困難である。

『体験格差』では、この現実をデータや当事者インタビューを通じて掘り下げ、解消策を模索している。

子どもの誕生日が集中する時期は出費が増えてつらい…5人の子どもに対する「お金の使い方の困難」

 習い事や家族旅行は贅沢? 子どもたちから何が奪われているのか? 

 低所得家庭の子どもの約3人に1人が「体験ゼロ」、人気の水泳と音楽で生じる格差、近所のお祭りにすら格差がある……いまの日本社会にはどのような「体験格差」の現実があり、解消するために何ができるのか。

 発売即4刷が決まった話題書『体験格差』では、日本初の全国調査からこの社会で連鎖する「もうひとつの貧困」の実態に迫る。

 *本記事は今井悠介『体験格差』から抜粋・再編集したものです。

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事例:5人の子と海や山には行けない

ウォルデ舞さん  長男(高校生)・長女(中学生)・次男(中学生)・三男(小学生)・次女(小学生)

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 ──5人の子どもを育てる大変さというのは、ちょっと想像がつかないです。

 みんな0歳から保育園に入れたので、ほとんど保育園が育ててくれたような感じですよ。

 一番上の子が小さいときにはその子に時間をかけられたんですけど、一番下の子は同じようには見てあげられていないですね。逆にそれがいいのか、伸び伸び過ごしてますけど。

 海とか山とかも、子どもの事故のニュースとかもあるので、そんな危険を冒してまでは連れていけないですね。二人の親で子ども5人とか見れないじゃないですか。

 ──お子さんが多い場合にはそういった難しさも出てくるんですね。

 女の子二人が週末にダンスを習っていた時期があったんですけど、日本の風習というか、悪習というか、親も一緒にずっといないといけなくて。

 でもそうすると、その時間はほかの子たちがほったらかしになっちゃうじゃないですか。陰で犠牲になってるほかのきょうだいもいるわけなので。

 男の子たちがスポーツ少年団に入っていたときも親の負担が大きくて。下の子たちがまだちっちゃかったのに炎天下で連れていかないといけないのも大変でしたね。

 ──お金の面に関わるところではどうですか。

 それぞれの誕生日には好きなものを1個買ってあげるというふうにしているんですけど、子どもたちの誕生日がくっついてる時期があって、そこがちょっとつらいですね。

 貯金という貯金はないので、児童手当が年に何回かまとめて入るのを貯金のように使っています。ただ、一番上の子は高校生になったので、児童手当はもうありません。実際には、高校生になってすごくお金がかかっています。

 ──どんなお金がかかっていますか。

 お米はいっぱい食べるし、定期代もかかるし、バスケ部の遠征費も結構かかります。高校に入ったらパソコンとか教科書とか制服とかも買わないといけなくて。果物をあまり買っていないので、ビタミンが取れてないかもしれません。お米がどんどんなくなるので、ほかのところで削るしかないですよね。

 長男は中学時代に、バスケで有名な私立の高校の監督から「ぜひうちに来てくれ」という話もあったんですけど、本人が県立を選びましたね。「私立に行ってもいいよ」と言ってはいたんですけど、内心はドキドキしていました。やっぱりきょうだいのトップバッターにお金を全部使っちゃったら後が続かないので。一番上の次が中学生で年子なんですよ。

 今の県立高校のチームは弱小なんです。だから、人生の分かれ道だったのかなと思います。「うちは貧乏だから」とか、「お金ない」とか、そういうことは子どもたちにあまり言わないようにはしています。でも、上の子は特によく気が付くから、家のこともわかっていて、県立を選んだんでしょうね。

 ──限られたお金を5人の成長に合わせてどう使っていくか、難しいですね。

 今は上の子二人を塾に行かせています。本当はその下の子も行かせたほうがいいと思うんですけど、経済的に難しいので我慢の時期ですね。英語でつまずかないように小6から通っていた英会話も途中でやめさせました。本人はそんなに好きじゃなかったみたいで、やめられて喜んでましたけど。

 上の子3人は部活でバスケをやっています。お兄ちゃんからのというよりは漫画の影響かなと思います。バスケでお金がかかるのは、最初にシューズを買うのと、靴下ぐらいですかね。ユニフォームは学校のやつを着回せるので。ただ、もうすぐ冬になりますけど、そうするとジャージを買うんですよ。そろそろ3番目の子が言ってくるだろうと思います。それが1万円以上にはなっちゃうのかなという感じです。

 本書の引用元『体験格差』では、「低所得家庭の子どもの約3人に1人が体験ゼロ」「人気の水泳と音楽で生じる格差」といったデータや10人の当事者インタビューなどから、体験格差の問題の構造を明かし、解消の打ち手を探る。