FOMC内の中立金利を巡る議論が再び活発化へ、米雇用者の大幅増で

AI要約

5月の米雇用統計では、雇用者数が予想を上回り、賃金もわずかに加速した。この結果が米金融政策を巡る議論を再燃させる可能性がある。

雇用統計が金融政策の景気への影響を考えさせ、中立金利の概念が焦点となっている。この議論により利上げが再び取りざたされる可能性もある。

一部では、利下げ観測が後退し、米国債が売られ、ドルが上昇するなどの市場反応も見られた。今後、金融政策に関する議論が注目されるだろう。

(ブルームバーグ): 7日に発表された5月の米雇用統計では雇用者数が目を見張るような伸びを示し、米金融政策が予想されたほど景気を減速させているのかどうかを巡る議論が再び活発化しそうだ。この議論は既に当局者の見解を二分している。

非農業部門雇用者数は前月比27万2000人増と、エコノミスト予想の全てを上回った。さらに、平均時給は前年同月比でわずかに加速した。それまでの3カ月間は減速し、金融当局を安心させ始めていた。

米雇用者数は大幅な増加、賃金伸び加速-米利下げの予想後ずれ

今回の雇用統計が来週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での金利据え置き予想を変えることはないだろうが、政策当局者が数カ月論じてきた議論に拍車をかけることになりそうで、一部では利上げを否定できないとの声もある。

ブラックロックのジェフリー・ローゼンバーグ氏はブルームバーグテレビジョンで、雇用統計は「FOMCが考えているほど金融政策が景気に抑制的かどうかという議論について、ドアをもう少し開けた」と語った。

年内の利下げ観測が後退したため、米国債は売られ、ドルは上昇した。

議論の中心にあるのは、中立金利というやや難解な概念だ。中立金利とは、政策が景気を刺激も抑制もしない水準。インフレと闘うため、FOMCは中立金利を大幅に上回る水準への利上げを目指してきた。

しかし、中立金利の推計が低過ぎるとすれば、政策金利は5.5%近くであっても、当局が考えているほどには機能していないことになる。そうなると、当局者はインフレ率を2%の目標に低下させる時間について再考を余儀なくされるだろう。追加利上げが必要かどうかも検討せざるをえなくなるかもしれない。

EYのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は、金融当局が過去のデータに反応するのではなく、インフレ抑制のため前向きの戦略をもっと検討するようになれば、当局と金融市場は恩恵を受けるだろうと指摘。「政策決定者は金融政策の景気への抑制の度合いについてもっと協議するようになるだろう。それは健全な議論だ」と話した。