NY市地下鉄に「地獄の夏」再来か-渋滞税停止で補修財源に危うさ

AI要約

ニューヨーク州知事がマンハッタン中心部に乗り入れる車両に課す予定だった「渋滞税」の無期限停止が決定したことで、ニューヨーク市内の公共交通機関利用者に再び「地獄の夏」が訪れる可能性が高まっている。

ニューヨークの交通システムの近代化には多額の投資が必要であり、渋滞税の収入がその一部に充てられるはずだったが、実施が見送られることで修繕や改良プロジェクトが遅延する恐れがある。

老朽化や気象による被害など、多岐にわたる課題に直面しているニューヨーク市の交通システムは、利用者の困難が継続する可能性がある。

NY市地下鉄に「地獄の夏」再来か-渋滞税停止で補修財源に危うさ

(ブルームバーグ): ニューヨーク州のホークル知事がマンハッタン中心部に乗り入れる車両に「渋滞税」を課す計画の無期限停止を決定したことで、ニューヨーク市内の公共交通機関利用者に「地獄の夏」が再び訪れる恐れが出ている。市内の地下鉄では2017年の夏、列車の遅延により乗客がプラットフォームで長時間待たされるといった事態が頻発した。

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ホークル知事は渋滞税の実施を見送る理由として、インフレやニューヨークの労働者階級に対する経済的圧迫を挙げた。100年以上の歴史を持つニューヨーク市の交通システムの近代化には150億ドル(約2兆3400億円)が必要とされており、渋滞税による収入が充てられる見通しとなっていた。

ニューヨーク州都市交通局(MTA)の常設市民諮問委員会(PCAC)のエグゼクティブディレクター、リサ・ダグリアン氏は「2017年に経験した『地獄の夏』が日常生活の一部になるかもしれない。そうなれば交通機関の利用者だけでなく、地域経済全体にとってもひどい負担となる」と述べた。

新たな収入が得られなければ、MTAは信号の改良やアクセシビリティーの改善プロジェクト、地下鉄路線の延伸、さらには交通システムの維持に不可欠な補修工事さえ延期せざるを得なくなる恐れがある。

つまりそれは、利用者が今後も遅延や運休に悩まされ続ける可能性があることを意味する。MTAは老朽化に加え、異常気象によるダメージも大きいシステムの維持に苦慮している。

ニューヨーク市の交通システムは転換期を迎えている。鉄道路線や信号システムを再建し、豪雨や洪水から駅・線路を守るためには数十億ドルが必要だ。そうした工事は、拡張プロジェクトや駅へのエレベーター増設などとともに、より多くの利用者を呼び戻し、運賃収入の増加に寄与する可能性がある。

原題:NYC Braces for More Subway ‘Hell’ as Toll Halt Risks Repairs (1)(抜粋)

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