「乗らなくても」じゃなくて「乗らないほうが」ボロくなる! 長期間動かさないクルマがみるみる劣化するワケ

AI要約

クルマを長期間放置するとエンジン内部のオイルが薄くなり、金属同士が直接こすれ合うことで摩耗や傷つきが起きる可能性がある。

また、燃料系統でも燃料が劣化し、特にインジェクターの噴射口の揮発性が進むことでエンジンの始動不良状態を引き起こす可能性が高い。

長期間放置したクルマはオイルや燃料系統の劣化により、エンジンの調子が悪くなることがあるため、定期的なメンテナンスが重要である。

「乗らなくても」じゃなくて「乗らないほうが」ボロくなる! 長期間動かさないクルマがみるみる劣化するワケ

 趣味のクルマを所有している人で、仕事が忙しかったりとちょっとした事情でしばらく乗らない期間があったとき、半年や1年経って久しぶりに乗ろうとエンジンをかけようとすると、「キュルキュルキュル……」とセルはまわるけどエンジンがかからない、なんてことはそれなりにあることです。

 人によっては「しばらく相手してやれなかったからへそを曲げちゃったのかなー」なんて思わず擬人化してしまったりすることもあるでしょう。

 でもじつはこの考え、一部は当たっていると思います。クルマという機械はなぜか放置期間が長くなるほど調子が悪くなる傾向があるんです。

 これはけっして人格をもっていて「へそを曲げちゃった」わけではありません。確実に原因があることなんです。

 ここではクルマを放置するとなぜ調子が悪くなるのかということを、ちょっと掘り下げてみたいと思います。

 長期間放置すると、なぜエンジンがかからなくなったり、調子が悪くなったりするのでしょう? ちょっとエンジン内部に想像力を働かせてみます。

 放置するとまずエンジンの内部ではオイルが重力に引かれて下の方に流れ落ちていきます。エンジンという機械は内部でピストンやクランクシャフト、カムなどのパーツがこすれ合いながら稼働しています。そのこすれ合う間にオイルが膜を張っているから傷つかずに済んでいるんです。

 では、オイルが流れ落ち、膜が薄くなってしまったらどうなるでしょう? 金属同士が直接こすれ合うので摩耗したり傷ついたりしてしまいます。これがひどくなると焼き付いたりカジリが発生して表面が破損してしまいます。

 よほど長期間の放置でなければ動かしているうちにオイルがまわり、ここまでのダメージにはなりませんが、しばらく放置したあとでいきなりエンジンを高回転までまわしたりした場合は、この限りではありません。

 また、燃料系統にも徐々に変化が起きています。燃料のガソリンは揮発性の液体なので、動かしていない状態でも、燃料系統の各部で揮発してしまいます。とくに燃料を噴射するインジェクターの噴射口は空気に触れているため揮発が進みやすい部分です。

 また、ガソリンは劣化しないと勘違いしている人もいると思いますが、長期間放置しているとガソリンも劣化が進みます。成分が酸化していき、揮発の進行と併せてだんだん茶色くドロッとしてきます。場所によっては周囲の金属の成分と化合して緑色をおびたりします。

 こうなってしまったガソリンは、本来の着火性能を発揮出来ないため噴射しているのに燃えにくく、エンジンの始動不良状態を起こします。

 また、インジェクターの噴射口はけっこう精密な構造をしています。その部分でガソリンが劣化すると、インジェクターの作動不良を引き起こす原因になります。これもまた始動不良の原因になり、始動しても不調な状態になる可能性が高いんです。