「辛い記憶を忘れようとする」と、かえって悪化する心理学的な理由

AI要約

ネガティブな感情にとらわれるときにどのように対処すれば良いかについて、塚本亮さんのアドバイスを要約した内容です。ネガティブな感情を避けようとすると、逆に強調されてしまうリバウンド現象やシロクマのジレンマを紹介しながら、感情を受け入れる重要性を強調しています。

負の感情が強くなることへの心理学的背景や、感情を吐露することの効果についても触れています。自己管理の一環として感情のコントロールそして負の感情との健全な付き合い方を身につける重要性に言及しています。

最終段落では、ネガティブな感情を受け入れることの大切さを強調し、感情のコントロールをマスターすることが個人の健康や成功に繋がると述べています。

「辛い記憶を忘れようとする」と、かえって悪化する心理学的な理由

誰しも調子の良い時もあれば、悪い時もあるものです。ネガティブな感情で頭がいっぱいで、仕事もプライベートも何をやってもうまくいかない...そんな日もあるでしょう。いち早く「余計なストレス」を排除して、生産性を落とさないためにはどうしたら良いのでしょうか? 塚本亮さんが語ります。

※本稿は塚本亮著『要領よく成果を出す人は、「これ」しかやらない(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです。

ネガティブな感情にとらわれて、仕事が進まず、プライベートも楽しくないときがあります。気分の波は誰にでもありますが、要領のいい人は、どのように負の感情をコントロールしているのでしょうか?

・「ネガティブな感情」を避けるほど、ネガティブになる

気分の波は、誰にでもあります。調子のいい日は、気分が乗り、前向きにさまざまなことに取り組めますが、そうした日々がずっと続くことはありません。不安や悲しみ、落胆、苦しみなどのネガティブな感情に心がとらわれることは珍しくありません。

特に、多くのことにチャレンジしているときは、なおさらです。むしろ、うまくいかないことのほうが多く、負の感情に振り回されがちです。一定の周期で訪れるネガティブな感情との付き合い方は、生産性を維持するうえでも非常に重要です。

多くの人は、負の感情を早く解消したいと考えますが、実はこれは間違っています。ネガティブな感情をなんとかしようとしすぎて、かえってそれを増大させてしまうのです。

リバウンド現象をご存じでしょうか。心理学ではよく知られている概念で、落ち込んでいるときや辛いとき、悲しいときに無理に明るく振る舞おうとするほど、ネガティブな感情が強くなってしまう現象のことです。

ネガティブな感情を避けるほど、その感情に意識が集中してしまいます。早く立ち直らなければいけない、悲しい顔をしている場合じゃない─。そういった真面目な性格が、逆に自分を追い込んでしまうのです。「シロクマのジレンマ」という実験もあります。

アメリカの心理学者ダニエル・ウェグナーが行ったこの実験では、シロクマに関するビデオを見せた後、シロクマを考えないようにと指示したグループが、逆に一番シロクマを思い出していました。これは、何かを意識的に避けようとすることが、実際にはその対象をより強く意識することにつながることを示しています。

ですから、仕事で大きなミスをしてしまったとき、失恋などプライベートで辛い思いをしたとき、そのことを無理に忘れようとはせずに、負の感情もそのまま受け入れてしまいましょう。悲しいときは悲しみに浸ひたり、辛いときは辛さを受け入れることが大切です。

また、感情を抱え込まずに、信頼できる友人や家族などに心境を吐露することも効果的です。人に話すことで、心が軽くなります。

また、負の感情も吐露することで、心のなかのモヤモヤが解消され、感情の正体をより具体的に理解することができます。ストレスフルな現代を生きる我々にとって、感情のコントロールは自己管理の一部です。負の感情との健全な付き合い方を理解し、実践することは、現代人の必須教養といっても過言ではないのです。

ですが、ひとたび感情のコントロールをマスターすれば、個人の精神的健康を保ち、長期的な成功への道を拓くことができます。困難な状況でも負の感情に振り回されない能力を身につけることで、挑戦が苦にならなくなるからです。

そのためにはまず、ネガティブな感情を受け入れて、その感情に蓋をしない。これだけ実践してみてもらえればと思います。