政策保有株売却で潤う損保株、約5兆円計上期待と日銀思惑で上げ加速

AI要約

大手損害保険グループが政策保有株の売却を加速し、5兆円近い売却益を見込む。

東京海上ホールディングスなど3社は政策保有株の削減を通じ、次の6年間で4兆9000億円の株式売却益を計上する見通し。

不祥事により金融庁から業務改善命令を受けたため、政策保有株の売却と株主還元に注力している。

政策保有株売却で潤う損保株、約5兆円計上期待と日銀思惑で上げ加速

(ブルームバーグ): 政策保有株(株式持ち合い)の売却を加速させる方針の大手損害保険グループは、今後5兆円近い売却益を手にする可能性が浮上し、投資家からの買いを集めて株価の上昇が加速している。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、スティーブン・ラム氏の試算によると、東京海上ホールディングスとSOMPOホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの大手損保グループ3社は政策保有株の削減を通じ、今後6年間で4兆9000億円の株式売却益を計上する見通しだ。手にした利益は配当の上積みや自社株買いなどに回し、株主還元の増加に寄与するとラム氏は予想している。

損保3社には2023年夏、保険金不正請求問題を起こした中古車販売のビッグモーターとの取引や企業向け保険料の事前調整でカルテルを結ぶなど次々と不祥事が発覚。金融庁は同年12月に業務改善命令を出し、この中で事前調整が行われた背景には政策保有株の割合など契約条件以外の要素が少なからずあったと断じ、株式持ち合い関係の解消を加速するよう求めていた。

行政処分を受けたことで3社は今年2月、合計6兆円を超す政策保有株全てを売却する方針を明らかにし、5月には売却で得た資金の一部を配当金など株主還元の強化に充てる考えや自社株買いの実施を発表。売却益の計上期待や株主還元姿勢への評価で東証33業種の保険業指数は5月に10%上昇し、東証株価指数(TOPIX)の上昇率1.1%を大きくアウトパフォームした。

東京海上Hなど損保3社、今期1.4兆円の政策株売却-還元強化へ

CLSA証券のストラテジスト、ニコラス・スミス氏は「デフレ下で持ち合い株式を保有することは許容できる」ものの、現在は状況が変わっており、持ち合い解消を通じて「他のことに投資するための大きな現金を手にしている」と指摘した。

株式の持ち合いは複数の企業が相互に株式を保有し、株主構成や経営の安定化を図るもので、戦後の財閥解体を機に日本企業の間で浸透。しかし最近は、非効率経営の象徴として投資家から批判が高まっているほか、東京証券取引所が企業に資本効率の向上を求めており、野村資本市場研究所の調べでは22年度の持ち合い比率は31%とピークから半分以下になっている。