LINEヤフー問題を“政治化”すべきではない─韓国財界人が冷静に語ったこと

AI要約

LINEヤフーの個人情報漏えい問題を受け、日本と韓国の関係に影響が出ている。両国関係者がこの問題をどのように捉えているか、また日韓経済人会議での意見交換の様子を通じて、両国の協力関係の重要性が示されている。

日本と韓国は歴史問題を抱えながらも、経済界では連携強化が進められてきた。日韓経済人会議が重要な場として機能しており、個人情報漏えい問題をめぐる政治問題への展開を避ける方針も明確になっている。

韓日経済協会会長や大韓商工会議所会長の発言からは、LINEヤフー問題を冷静に対処し、日韓企業の協力関係を重視する姿勢が伝わってくる。日韓関係の改善に向けて、政治問題と経済協力のバランスを保つことが重要である。

LINEヤフー問題を“政治化”すべきではない─韓国財界人が冷静に語ったこと

個人情報漏えいを起こしたLINEヤフーが韓国IT大手ネイバーとの資本関係を見直すよう行政指導を受けたのを機に、韓国では野党などが日本に反発する姿勢を見せている。

両国関係への波及が懸念されるなか、5月中旬に開催された日韓経済人会議では、この問題はどのように論じられたのか。佐藤大介氏が、両国関係者の意図を解説する。

日本と韓国は、隣国として長い交流の歴史を持ち、互いに重要性を認識している一方で、日本による植民地支配の過去を巡り、さまざまな政治的対立も生み出してきた。

2018年には韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工への賠償金支払いを命じる判決を出し、日本政府が19年に半導体材料の対韓輸出規制を強化すると、韓国側はこれを「報復」と受け止めて日本製品の不買運動に発展した。政府間の対話チャンネルは機能しなくなり、日韓関係が「戦後最悪」と言われる状態になったことは記憶に新しい。

日韓が歴史問題という火種を抱えているなかで、関係強化の方向性を貫いてきたのが経済界だ。日韓の企業トップらが意見交換する「日韓経済人会議」は1969年にスタートして以降、一度も中断することなく、日韓交互での開催を毎年続けている。

2024年で56回目となる会議は、5月14~15日にかけて東京都内で開かれ、約220人が参加した。コロナ禍によって3年間はオンラインによる開催となったことから、日本でおこなわれるのは6年ぶりとなる。

私は今回、15日におこなわれたセッションのコーディネーターを務め、日韓間の連携強化について各分野の専門家から意見を聞いた。会議での発言から、日韓関係の今後について考えてみたい。

会議の開催時期は、個人情報漏えい事件を引き起こしたLINEヤフーに対し、日本政府が行政指導で韓国IT大手ネイバーからの出資比率を引き下げるよう求めたことから、韓国内で反発が広まっていた時期だった。取材に訪れた韓国メディアの記者は「日本の経済人に、LINEヤフー問題に関する見解を聞きたい」と話し、韓国側で注目度が高いことを示していた。

一方、日本ではこの問題への関心は韓国ほど高くはなく、韓国メディアの取材に戸惑う関係者もいた。だが、参加者全体に共通していたのは「これを日韓の政治問題としないよう、冷静な対処が必要だ」という意見だった。

韓日経済協会会長の金鈗(キム・ユン)会長(三養ホールディングス会長)は「事態が円満に解決されることを期待したい」と、事態を静観する構えを見せた。大韓商工会議所の崔泰源(チェ・テウォン)会長(SKグループ会長)は、基調講演でこの問題には触れず、日韓には少子高齢化や経済成長の停滞といった共通の課題があるとし、「相互補完的な経済関係を構築すれば危機を克服できる」と述べた。

両者の言葉からは、LINEヤフー問題を政治化させず、日韓企業が協力関係をより進めていくべきという思いがにじみ出ているようだった。