あなたが乗った旅客機が戦場に着陸も…民間を襲った「GPS撹乱」恐怖(2)

AI要約

最新の電子戦技術により、GNSSを利用した誘導ミサイルやドローンが無力化される可能性が高まっている。

ロシアのスプーフィング技術がウクライナ戦争で大きな役割を果たし、エクスカリバー誘導ミサイルの命中率は急落した。

電子戦による信号撹乱が民間地域にも及び、経済的損失だけでなく、民間人に危険を及ぼす懸念も浮上している。

◆米先端ミサイル、ロシア電波妨害で無力化

こうした傾向は、電子戦が戦況を覆すゲームチェンジャーに浮上していることを見せている。GNSSで敵の位置を把握して精密打撃する誘導ミサイルとドローンが電子戦で無力化しているからだ。代表的なのが「スプーフィング(Spoofing)」だ。GNSSシステムに偽の信号を送り、ミサイルとドローンに別のところを把握させる技術だ。

スプーフィングは最近のウクライナ戦争でロシアが攻勢になっている原動力という評価を受ける。ハドソン研究所のパット研究員は3月の米議会で「ロシアのスプーフィングでウクライナが使用する米軍のエクスカリバー誘導ミサイルの適中率が70%から6%に急減した」と明らかにした。ワシントンポスト(WP)は「電波妨害で昨年下半期からエクスカリバーは戦場から退き、高速砲兵ロケットシステム(HIMARS)も事実上無力化した」と伝えた。イスラエルもイランのミサイル攻撃などに対抗してスプーフィングを積極的に使用している。イスラエル軍のハガリ報道官は「GPS撹乱は防御戦略に必須」と話した。

スプーフィングは難しい技術でない。スプーフィング電波を生成するスプーファーはコンピューターで作った無線機のソフトウェア無線(SDR)とオープンソースソフトウェアさえあれば簡単にできる。SDRはオンライン電子商取引サイトで安く購入できる。

問題はスプーファーの使用が急増し、作戦地域から数百キロ離れた民間地域まで被害を受けるという点だ。元イスラエル国家サイバー局長のウンナ氏はWPに「スプーフィングが(ミサイル防衛に)効果的だが、副作用も大きい」とし「ベイルートとカイロの空港が主に被害を受ける」と話した。

◆「衛星撹乱5日間で63億ドル損失」

電子戦が生活の不便を越えて深刻な被害をもたらすという懸念も出ている。位置を誤って認識したミサイルとドローンが民間人を打撃するおそれがあるからだ。経済的な被害も膨らむ。ニューヨークタイムズは「GPSおよび衛星信号撹乱が続けば通信・電力・放送・金融市場などが大きな打撃を受けるだろう」と予想した。英コンサルティング会社ロンドンエコノミクス(LE)は英国で衛星信号が5日以上撹乱される場合63億ドル(約10兆円)以上の損失が発生すると予想した。

このため各国はGNSS欠陥の補完に取り組んでいる。地上送信局から発射された電波で精密な位置と時刻情報を把握する地上波航法システム(eLoran)が代表的だ。しかし技術が進んだ米国とロシア、英国と中国なども試験運用や送信局構築段階にとどまっている。英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のウィディントン博士は「まだ日常生活でGNSSの代わりにはなりにくい」と指摘した。