EUは結束を保つことができるか…欧州議会選挙2024で「右派勢力」「EU懐疑派」が伸張するこれだけの理由

AI要約

EUの立法機関である欧州議会の選挙が6月6日~6月9日に実施され、右派勢力が伸びると予想されている。

20世紀に戦争が繰り広げられた過去から、ヨーロッパ統合の努力が始まり、現在のEUの成り立ちにつながっている。

EUは歴史を経て27ヵ国のメンバーとなり、イギリスの離脱などを経て現在に至っている。

EUは結束を保つことができるか…欧州議会選挙2024で「右派勢力」「EU懐疑派」が伸張するこれだけの理由

 EU(欧州連合)の立法機関である欧州議会の選挙が6月6日~6月9日に実施される。5年に1度、比例代表制で行われるが、720の議席は人口に応じて配分される。ドイツが最大で96議席で、ルクセンブルクやマルタは最小の6議席である。今回は、右派勢力が伸びると予想されている。

 私はヨーロッパと縁が深いが、欧州議会選挙のときに現地に行っても、国民の関心は薄く、盛り上がりに欠けていた。ところが、2016年6月のイギリス国民投票でのEU離脱決定、さらには2022年のロシア軍のウクライナ侵攻以来、EUが存在感を増し、有権者の投票意識が高まっているーー。

 20世紀になって、ヨーロッパ諸国の戦争に端を発した世界戦争が二次にわたって繰り広げられた。そこで、第二次大戦後、フランスのシューマン外相や実業家のジャン・モネらが、ヨーロッパの統合を模索する努力を始めた。

 近代ヨーロッパの戦争は、普仏戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦と、フランスとドイツの間で戦われた。それは、両国の国境地帯にある資源、つまり石炭と鉄の争奪が原因であった。そこで、この二つをヨーロッパ全体で管理すれば、戦争の原因を除去できると彼らは考えたのである。

 こうして、フランス、西ドイツ、イタリア、ベネルクス3国の6ヵ国は、1952年にヨーロッパ石炭・鉄鋼共同体(ECSC)を発足させた。ジャン・モネがECSCの委員長となった。そして、1957年には、6ヵ国はヨーロッパ経済共同体(EEC)を組織した。

 このとき同時に発足したのが、ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)である。当時の世界では、核開発は米ソ二大国の独壇場であった。そこで、1国では開発が難しい原子力を6ヵ国で共同開発しようとしたのである。情報交換、共同研究、共同企業への投資によって、原子力の平和利用を推進することを決めた。1967年には、ECSCとEECとEURATOMが統合されて、ヨーロッパ共同体(EC)となった。

 ECには、その後、1973年にはイギリス、アイルランド、デンマークが加盟し、1981年にはギリシャが、1986年にはスペインとポルトガルが加わった。

 さらに、1989年のベルリンの壁崩壊・東西冷戦の終焉以降、1995年にはオーストリア、フィンランド、スウェーデンが、2004年にはキプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニアが、2007年にはブルガリア、ハンガリーが、2013年にはクロアチアがメンバーとなっている。現在の加盟国は27ヵ国である。

 このようなEUの拡大(enlargement)には目を見張るものがある。しかし、2020年2月1日には、イギリスがEUから離脱した。