「プロパガンダ女を逮捕し、拷問せよ!」ロシアだけでなくウクライナからも行われた「憎悪に満ちた脅迫」

AI要約

ロシア人女性がウクライナ戦争に反対して政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、プロパガンダに対抗する姿勢を取る。その行動により国内で非難される中、抗議活動を続ける彼女の姿が描かれる。

記者会見の後に脅迫が始まり、ウクライナおよびモスクワからの圧力により会見が中止される。オフシャンニコワはプロパガンダの先兵として批判される。SNS上では憎悪と中傷が彼女に向けられる。

ロシアメディアや政府からの攻撃を受けながらも、オフシャンニコワは反戦の立場を貫き、差別や脅迫に屈しない強い意志を持っている。

「プロパガンダ女を逮捕し、拷問せよ!」ロシアだけでなくウクライナからも行われた「憎悪に満ちた脅迫」

 「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。

 ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。

 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。

 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第20回

 『「見てほしいものがある」…ウクライナの被爆地でロシア人女性がイラク従軍兵の男に見せられた「衝撃的なモノ」とは』より続く

 記者会見の話をした翌朝、リーザからメッセージが届いた。

 「記者会見のプレスリリースを出しました。ところが信じがたいことが起きました。モスクワからインターファクスに電話が入り、脅迫が始まったのです。申請書を受け取った女性も脅されました。今までこんな目に遭ったことはない、と彼女は言っています。脅迫はモスクワと、ウクライナの記者たちの双方から来ています。記者たちはあなたのことをプロパガンダの先兵で、FSBの回し者だと言っています。こうした否定的な反応のせいで、記者会見は中止せざるをえなくなりました」

 SNSを開いて読み始めた。憎悪と、わたしに向けた侮辱の波が途切れることなく押し寄せていた。

 「オフシャンニコワはクレムリンが操る心理作戦に関与している。彼女は制裁解除を訴えている」

 「ウクライナ・ジャーナリスト連盟はオフシャンニコワからヴァツラフ・ハヴェル賞を剥奪することを呼びかける」

 「保安庁は何をしている。ただちにプロパガンダ女を逮捕し、訊問せよ」