頼総統 就任の裏で…中国が台湾起業家取り込み!?【WBS】

AI要約

台湾の新総統として就任した頼清徳氏に中国が警戒し、「台湾独立派」とみなす中、中国は台湾の若手起業家を取り込むための工作を行っている。

頼氏は中国との対話を望みつつも台湾の独立を否定し、中国は対等な立場を強調。軍需企業を制裁するなど対抗措置を取っている。

中国が台湾に向けて取り込み工作を行っており、台湾出身の若者たちを支援し起業させる施設を設けるなど、経済的メリットを与えつつ台湾の意識を変えようとしている。

頼総統 就任の裏で…中国が台湾起業家取り込み!?【WBS】

20日、台湾の新たな総統として就任式に臨んだ民進党の頼清徳氏。中国は頼氏を「台湾独立派」とみなし、強く警戒しています。その中国は、最近、台湾の若手起業家を取り込むためのある工作を行っています。どのようなものなのでしょうか?

台湾の新総統に就任した頼氏は就任演説で「新政権は傲慢にも卑屈にもならず現状を維持する。中国は中華民国が存在するという事実を直視し、対立を対話に置き換えることを望む」と語り、蔡英文前総統の路線を引き継ぎ、台湾の現状維持を強調した上で中国に対等な立場での対話を呼びかけました。

さらに会場から大きな拍手が上がったのは「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」との発言です。台湾は中国の一部だとする中国側の主張を否定したのです。

こうした発言に対して中国外務省は「台湾独立は死に至る一本道であると強調しておく。いかなる名目であろうとも台湾独立の試みは必ず失敗する」と強い口調で不快感をあらわにしました。

また、中国商務省は台湾への武器売却に関わったとして、ボーイング社の防衛部門などアメリカ企業3社を「信頼できない企業リスト」に追加したと発表しました。

「中国からの様々な脅威と浸透に直面しているが、我々は国を守る決意を示さなければならない」(頼新総統)

頼氏が警戒するのは、中国が台湾を取り込むことを狙った「浸透工作」です。

それが垣間見える場所があります。海の向こうにうっすらと見える台湾の金門島に向かって、「一国二制度で中国を統一する」と書かれた巨大な看板。ここは中国福建省アモイです。この街で今広がりを見せているものがあります。

「こちらの建物には両岸青年就業創業基地と書かれた看板が掲げられています。実は最近アモイ市内ではこうした両岸、つまり中国と台湾の関係を発展させるための施設が増えているんです」(北京支局の杉原啓佑記者)

施設の中に入ってみると、区分けされた小さなオフィスで働く人たちの姿がありました。

「台湾の嘉義県出身だ。ここで働こうと思って来た」(施設に入居する人)

「台湾の新竹市から来た。この施設のサービスはとても良い」(施設に入居する人)

彼らは台湾出身の若者たち。ここは中国政府が台湾の若手企業家たちに事業スペースを無料で提供している施設です。飲食や健康食品、IT関連などおよそ100社がここで起業しています。

2年前に入居したという葉宗詰さん(31)。アモイ市内で台湾風の夜市を企画・運営する会社を立ち上げました。

「開業資金は最大で320万円の補助金をもらった。 中国は私たち 台湾の若者を支援してくれる」(葉さん)

葉さんが運営する夜市が開かれるのは、この施設の敷地内。施設側が無料で貸してくれるため、運営コストを抑えられるといいます。

「この辺りに多い時には150軒くらいの屋台が並ぶ。収入は台湾にいた頃に比べて2倍に増えた。年収430万円ほどは稼げている」(葉さん)

金銭面でのメリットを与えることで、台湾の若者たちを取り込むことを狙った浸透工作の一つです。実際に恩恵を受ける人たちにはその効果が表れ始めています。

アモイで飲食店を開業した呉浩岳さん。開業資金の補助とは別に、毎月最大13万円の経営補助金を受け取っています。

「Q.頼清徳新総統は中国と距離を置く考えだが?」

「全ての台湾の人が台湾の指導者に満足しているわけではない。特に若い世代はあまり支持していないと思う」(呉さん)