お騒がせ米ラッパー、イェ(元カニエ・ウェスト)氏の海南公演を許可した中国当局の裏事情

AI要約

米黒人ラッパーYe(イェ、旧名カニエ・ウェスト)氏が中国南部・海南省海口で公演を行い、9月15日に多くのファンを驚かせた。この異例の公演許可にはさまざまな憶測が飛び交っており、中国当局の厳しい検閲状況との対比が注目されている。

多くの海外アーティストが中国での公演を避ける傾向にある中、イェ氏の公演が許可された理由には、彼の母親が中国との関係を持っていたことや、その一連の物議を醸す発言に対する反応が含まれている。

イェ氏の中国公演には多くのファンが驚き、批判的な意見や苦情も寄せられており、彼の過去の作品や言動が中国の文化基準にそぐわないとの指摘がある。

お騒がせ米ラッパー、イェ(元カニエ・ウェスト)氏の海南公演を許可した中国当局の裏事情

米黒人ラッパーYe(イェ、旧名カニエ・ウェスト)氏(47)が9月15日、中国南部・海南省海口のステージに立ち、多くのファンを驚かせた。習近平政権下で西側アーティストの訪中公演が厳格化されるなか、お騒がせアーティストとして物議を醸すイェ氏の公演を中国当局が許可した。そんな異例の措置をめぐり、ささやかれるさまざまな憶測を英紙ガーディアンが特集した。

中国では16年ぶりとなるイェ氏の公演が許可された場所は大都市ではなく、リゾート地でもある海南島だった。ガーディアン紙によると、公演決定が発表されたのは当日のわずか数日前だったが、4万2000枚以上のチケットは数分で完売した。

中国共産党は国内の出版物やソーシャルメディアの投稿をはじめ、アーティストらの公演などに対しても厳しく検閲。人口14億人という中国の巨大市場を狙い、海外から流入するアートやコンテンツについても同様に管理している。

同紙によると、中国当局は公演を承認する前、外国人アーティストにセットリストや歌詞の提出を求め、許可しない場合も多く、習政権下では近年、海外アーティストの訪中は減少している。例えば、2017年にはジャスティン・ビーバーが「行儀の悪いエンターテイナー」と判断されて入国を禁じられ、その前年にはレディー・ガガがダライ・ラマと面会した後、中国での全楽曲の使用が禁止された。

そのため、世界的人気を誇る米歌手ビリー・アイリッシュや英ロックバンド、コールドプレイ、米歌姫テイラー・スウィフトなどのトップアーティストは、ハナから世界ツアーに中国を含んでいない。そんな中でイェ氏の公演が許可されたことに首をかしげる向きも多い。

その謎を解くカギの一つがイェ氏の母親ドンダ・ウェストさんだと指摘する見方もある。2007年に亡くなったドンダさんはシカゴ州立大学で英語学部の教授を務め、南京大学でも1年間教鞭をとっていたことがあり、その関係でイェ氏が親中派とみなされたというものだ。

だが、反ユダヤ主義的発言を繰り返し、アメリカにおける奴隷制度は黒人の選択によるものだと主張し、トランプ氏支持を表明するなど、イェ氏の一連の言動によりファン離れやスポンサー離れが加速しているともいわれる。また、テイラー・スウィフトとの長年の確執や、性差別的な歌詞は中国のSNSユーザーらによっても引用されてきたことから、イェ氏の中国公演が実現したことに多くのファンも驚いている。

ガーディアン紙によると、公演が行われた海口市当局には、イェ氏の過去の作品や物議を醸す不快な発言について複数の苦情を受け、ある抗議文は「(イェ氏の)歌詞と公の場での行動は中国の文化芸術活動の基準を満たしておらず、社会に悪影響を及ぼす可能性がある」と訴えた。