大統領選で“分断”進むアメリカ 「究極の分断」オレゴン州では“州境を変えよう”という運動も “二極化”巧みに利用するトランプ氏

AI要約

アメリカの大統領選挙直前になる中、西海岸のオレゴン州で州を2つに分ける動きが起きている。共和党支持者が増える東部地域がアイダホ州に編入したいという提案に対し、都市部の民主党支持者は州全体の多様性を重視して反対している。

トランプ前大統領の強い発言や二極化を利用する手法が分断の原因となっており、対話を否定する動きが懸念されている。

実現には課題が多く、専門家からも可能性は低いとの見方が示されている。

大統領選で“分断”進むアメリカ 「究極の分断」オレゴン州では“州境を変えよう”という運動も “二極化”巧みに利用するトランプ氏

アメリカの大統領選挙まで1か月半。選挙の年には国民の分断が強まると言われていますが、西部では実際に州を2つに割ろうとする動きが起きています。現地を取材しました。

アメリカ 共和党 トランプ前大統領

「民主党は民主主義の党ではない。むしろ民主主義の敵だ」

11月の大統領選挙に向けて分断を煽る発言を繰り返すトランプ前大統領。そうした中、国内では「究極の分断」とも言える動きが起きています。

農村地帯が広がる西海岸・オレゴン州東部。州の東部に住むマイク・マカーターさんが地元の政策委員に訴えているのが…。

「大アイダホ構想」会長 マイク・マカーターさん

「住民はオレゴン州とアイダホ州の境界線を動かす議論の開始を求めている」

州の境界線を300キロも移動させてオレゴン州を2つに割り、東部を隣のアイダホ州に編入させてほしいというのです。

「大アイダホ構想」会長 マイク・マカーターさん

「こっち(東部)の人たちは、オレゴン州西部よりもアイダホ州のほうに価値観が近いと感じています」

過去の大統領選挙で民主党候補が勝利を続け、「青い州」として知られるオレゴン州。これは人口の多い都市部に民主党支持者が多いためで、実は地域別でみると、共和党を支持する地域が大部分です。

共和党支持のマカーターさん。大麻の規制緩和など民主党主導のリベラルな政策に納得できないだけでなく、自分たち保守派の声が政治に届いていないと感じています。

「大アイダホ構想」会長 マイク・マカーターさん

「議会は人口の多い場所(民主党支持の地域)のことだけを気にしていて、こちらのことは気にしていません。私たちはただ、もっと価値観を共有してくれる統治を望んでいるだけです」

そこでオレゴン州東部を共和党支持のアイダホ州に編入させようと、5年前、州の境いを移動させる運動を始めたのです。突拍子も無い考えに見えますが…。

記者

「オレゴン州とアイダホ州の境にある川に来ています。境界線の移動に向けては住民投票も行われていて、実に州内3分の1以上の郡で過半数を超える支持を得ているんです」

一方、オレゴン州の都市部に住む人は…。

オレゴン州都市部の住人

「州には多様性があった方がよいと思います。異なる考えがあることで、州としてより強くなると思います」

実現には州議会の承認などが必要で、可能性は低いとされています。

一方、専門家はこうした動きは対話を諦めるものだとして懸念を示すとともに、党派を巡る二極化をトランプ氏が巧みに利用してきたと分析します。

ウィラメット大学 法学部 ノーマン・ウィリアムズ教授

「私はトランプ氏を分断の原因というよりも、分断の結果だとみています。トランプ氏は思想が明確に異なる2つの党派にアメリカ国民が二極化していくのを非常に抜け目なく見抜いていたのです」

7月に続いて再び暗殺未遂の標的となったトランプ氏が暗殺未遂の責任は民主党にあると主張する中、分断はますます深まっていきそうです。