ハリス氏〝辛勝〟も優勢には程遠く…米大統領選、超激戦州でトランプ氏とテレビ討論会 心理戦は奏功も欠けた具体的な政策

AI要約

11月の米大統領選を巡る民主党のカマラ・ハリス副大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領による初のテレビ討論会が開催された。

ハリス氏はトランプ氏に挑発的な姿勢を見せることで、初戦を有利に進める作戦を展開していた。

トランプ氏は移民政策を巡る議論でハリス氏を追い詰める機会を逃し、ハリス氏の心理戦が奏功した。

【ニュース裏表 峯村健司】

11月の米大統領選を戦う民主党のカマラ・ハリス副大統領と、共和党のドナルド・トランプ前大統領による初のテレビ討論会が10日夜(日本時間11日午前)、開かれた。

前回6月のテレビ討論会では、民主党のジョー・バイデン大統領が言葉に詰まったり失言をしたことで、支持率を下げて撤退に追い込まれた。

今回の会場は、東部ペンシルベニア州フィラデルフィア。7月に選挙集会で演説していたトランプ氏の暗殺未遂事件が起きた因縁の地だ。同州の勝者が大統領選を制するといわれるほどの「超激戦州」でもある。

黒いパンツスーツに白いブラウス姿のハリス氏は冒頭、ステージを横切り、トレードマークの紺色のスーツに赤いネクタイを着けたトランプ氏に歩み寄った。

「カマラ・ハリスです。いい議論をしましょう」

ハリス氏はこう自己紹介して、右手を差し出した。トランプ氏は驚いたように少し体を反らした後、握手をした。前回討論会で、バイデン氏はトランプ氏と握手をせず、ほとんど目も合わせなかった。ハリス氏は冒頭であえて、トランプ氏の意表を突くことで、初戦を有利に進める思惑があったと筆者はみている。

実は、ハリス氏は討論会の5日前から、同州ピッツバーグで「合宿」(米メディア)し、入念な準備を進めていたという。どのような練習をしていたのだろう。

「あえてトランプ氏を挑発することで、失言を引き出す作戦を練っていたようだ」

民主党幹部の一人はハリス陣営の戦術をこう解説する。出馬を決めたばかりで準備や経験不足が否めないハリス氏が、トランプ氏の「敵失」を狙って具体的な政策論争に持ち込ませない意図が透けてみえる。

こうしたハリス氏の「心理戦」は奏功したようだ。

トランプ氏は終始、前かがみになって両手をテーブルに置いたまま、険しい表情で語っていた。これはトランプ氏の調子が出ていない時に見せる姿勢だ。

議論のテーマが移民政策になったときのことだ。移民に寛容な政策を打ち出したバイデン政権に批判的な意見が米国内で出ており、大統領選の重要な争点となっていた。トランプ氏は移民問題の責任者だったハリス氏を追い詰める絶好のチャンスだったにもかかわらず、オハイオ州の移民についてこう言及した。