岸田首相の訪韓に「物足りなさ」を感じる韓国世論 澤田克己

AI要約

岸田文雄首相が韓国を訪問し、尹錫悦大統領と会談。尹政権の支持率低迷や対日政策を巡る批判、日韓関係の温度差が浮き彫りに。

尹政権は支持率低下や政治的攻撃に直面。対日政策をめぐる野党の攻撃材料や世論の動向に注目。

徴用工問題など対日政策が日韓関係の火種となる中、尹政権が厳しい立場でありながらも強硬姿勢を貫く姿勢。

岸田首相の訪韓に「物足りなさ」を感じる韓国世論 澤田克己

 退任を目前に控えた岸田文雄首相が韓国を訪問し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と会談した。日本側には関係改善の流れを確認しておきたいという思惑があったとされるが、韓国では「やめる人が何をしに来るのか」という戸惑いも語られた。11月の米大統領選の結果にも大きな影響を受けそうな日韓関係の今後を考える際には、日韓両国の温度差にも目を配る必要がある。

◇支持率低迷の尹政権

 尹大統領はいま、極めて厳しい状況に置かれている。政権の中間評価と位置づけられた4月の総選挙で与党・国民の力は惨敗し、与党との関係はぎくしゃくしたままだ。総選挙前に目玉政策として打ち出した医療改革では、反発する医師のストライキがいまだに続いており、事態を収拾できない政府に批判の矛先が向いている。

 にもかかわらず、尹大統領は妥協しない姿勢を貫いており、事態が好転する兆しは見えない。韓国ギャラップ社の調査では、総選挙前に30%台だった支持率は選挙後に20%台に低下したままだ。9月6日発表の調査では23%だった。

 進歩派野党の主な攻撃材料となっているものの一つが対日政策だ。日韓の事前協議を経て世界文化遺産への登録が決まった「佐渡島(さど)の金山」についても、現地での展示に「強制労働」という言葉が使われていないのに受け入れたと問題視し、「屈辱外交」と政権批判のボルテージを高めている。

 日韓関係を取材している韓国紙の記者は「いま岸田首相と写真を撮っても尹大統領にメリットはなく、むしろ野党に攻撃材料を与えるだけだ。それでも岸田首相が来るというなら歓待してしまうのが、尹大統領のキャラクターなのだけれど……」と話していた。

◇くすぶり続ける徴用工問題

 政治的な分断と対立が深刻な現在の韓国では、野党は使えそうな攻撃材料を次から次へと繰り出してくる。対日政策も、そうした政争の具にされている側面は否定できない。それに呼応する世論が盛り上がっているとは言えなそうだ。昨年は東京電力福島第一原発からの処理水放出を容認した尹政権を攻撃するキャンペーンが展開されたが、世論への影響は限定的だった。佐渡金山への批判も、それによって訪日客が減ったり、日本製品の売り上げに影響が出たりというわけではない。