「なんか違う」中国人がネット通販で「爆買い→大量返品」の怪、その裏でちゃっかり儲ける意外な企業とは?

AI要約

中国におけるネットショッピングの裏側で「爆買い→大量返品」という現象が起きており、特に女性向けアパレル商品の返品率が著しく増加している。

この奇妙な購買行動の背景には、セールやインフルエンサーの影響による衝動性や返品システムの手軽さがあり、返品が簡単であることから顧客が商品を試してみて返品する傾向がある。

多くのEC企業が返品率の増加により損失を出し、特に女性向けアパレルショップの閉店が相次いでいる。

「なんか違う」中国人がネット通販で「爆買い→大量返品」の怪、その裏でちゃっかり儲ける意外な企業とは?

 中国ではネットショッピングが盛んだが、その裏で「爆買い→大量返品」という奇妙な購買行動がブームになりつつある。ショップにとっては迷惑以外の何物でもないが、このトレンドを追い風に、収益を上げている意外な企業が存在する。その実名と、中国人による奇妙な購買行動の動機を詳しく解説する。(中国アジアITライター 山谷剛史)

● よく閲覧され、よく買われるが よく返品される!

 世界一のEC(ネット通販)取引額を記録する中国で、ユーザーからの返品の多さが問題となり、多くのショップが頭を抱えている。

 特にひどいのが女性向けアパレル商品だ。現地の報道などによると、中国ECプラットフォームにおける返品率は、少し前までは10%程度だったのが、30%、60%と急上昇。今では80%~90%に達することもあるという。

 レディース服を取り扱うECサイトは「よく閲覧され、よく買われるが、よく返品されている」。それが今の中国EC業界の実態だ。

 中国のEC企業は、毎年6月18日(618商戦)と11月11日(独身の日セール)に大規模なセールを開催する。このうち今年の618商戦では、とある女性向けアパレルショップの返品率が80%に達して話題となった。

 この店ではもともと、セール当日の売上高が約1000万元(約2億円/1元=約20円換算)に達していた。だが、その約8割が返品されたのだ。

 顧客に返金したり、返品された商品を処分価格で販売したりした結果、損失額は50万~60万元に膨れ上がった。つまり、セールに参加して大儲けしたはずが、1000万円以上の赤字が出たわけだ。

 この店だけではない。特に今年の初め以降、女性向けアパレルを扱うECストアの多くが「返品率のジレンマ」から抜け出せず閉店している。

● ネット通販の潮流に乗り 「ライブコマース」を始めた企業も大損

 「TikTok」運営元のByteDanceが中国向けに展開しているショート動画SNS「抖音(Douyin)」のクライアント企業も例外ではない。Douyinではインフルエンサーがライブ動画を配信しながら商品を宣伝する「ライブコマース」が人気で、利用者を増やしてきた。

 特に中国人女性はインフルエンサーが着ている服や化粧に魅せられ、「同じものを買いたい」と勢いよく購入するケースが多い。だが昨今は「買ってみたら思っていたのと違った」と返品する例が続出している。それだけではなく、「よその店のほうが安かったから返品する」というのもよくある理由になっている。

 では実際に、中国の消費者は、どんな感覚で返品システムを使っているのか。

 中国人の妻と子供と一緒に、中国で暮らす日本人の「華村」氏は、テキスト配信サービス「note」の記事で、度を越えているように見える「妻の返品事情」について触れている。以下、ご本人の許可を得て、その一部を掲載しよう(※改行位置は一部変更しているが、それ以外は原文ママ)。

「(前略)うちは双子が産まれたわけでも、もちろん隠し子がいるわけでもないのですが、なぜ2台のベビーカーが必要なのでしょうか。答えは、嫁が2台とも試してみたいからとりあえず注文してみた、ということでした。どちらがよいかを比較し、気に入らなかったほうは返品してしまえばいいというわけです。

(中略)僕の知る限りでは中国では買ったものの返品、とりわけネット通販におけるそれは日本より非常に簡単で、特段の事情がなくとも手軽に行えます。手続きもアプリからすぐにできますし、商品の種類による制限もほとんどありません。金額も多くの場合は満額で返ってきます。

嫁はこの手軽な返品を利用し、いろいろなものを試してはすぐに返品する癖があるのですが、ベビーカーに関してもその癖が出たようです。」

( 『中国の簡単すぎる返品、むしろ消費者にとって損じゃないか説』より)

 さらに、華村氏の妻はベビーカーだけでなく、シーツも返品していたとのことだ。