トランプ、ハリス両氏は「弱い候補」 大接戦は必至、政治的な分極化が続く 前嶋和弘・上智大学総合グローバル学部教授

AI要約

大統領選挙は大接戦で、トランプ前大統領とハリス副大統領の支持率が拮抗している。現地では勝者が明確ではなく、どちらが勝つかはまだ不透明。

焦点は激戦7州と無党派層の動向にある。無党派層の動向が重要であり、選挙に行かせるために戸別訪問などの手法が利用されている。

2020年選挙の高い投票率や情報戦の重要性、米国の分断と分極化の継続など、勝敗を左右する要素が存在する。

トランプ、ハリス両氏は「弱い候補」 大接戦は必至、政治的な分極化が続く 前嶋和弘・上智大学総合グローバル学部教授

── 大統領選の展望は。

■大接戦必至だろう。トランプ前大統領、ハリス副大統領ともに支持の拡大が限定されるという意味で弱い候補であり、支持率は拮抗(きっこう)せざるを得ない。日本では一時期、トランプ氏でほぼ決まりという意味の「ほぼトラ」なる言葉が出回っていたが、現地でそうした状況は起きていない。現時点でどちらが勝つと断言する人がいたら、その言葉を信用してはいけない。

── 焦点は激戦7州(ペンシルベニア、ジョージア、ノースカロライナ、ミシガン、アリゾナ、ウィスコンシン、ネバダ)の動向か。

■そうなる。加えて全米で約4割いる無党派の動向が勝敗を左右する。無党派層は、民主党寄り、共和党寄りが3分の1ずつ。残り3分の1がまったくの無党派で選挙に行かない。トランプ陣営は共和党寄り無党派層を、ハリス陣営は民主党寄り無党派層をいかに選挙に行かせるかが勝負を分ける。

 具体的には、ボランティアが戸別訪問して無党派の有権者を車に同乗させて投票所に連れて行く。老人ホームを訪問して、郵便投票で投票してもらって専用ポストに投函する。ドブ板選挙のようにも見えるけれど、どこに誰がいてどういう投票をしたのかというデータが蓄積されていて、データに基づいて戸別訪問する。

── 投票率はどうか。

■2020年選挙は66%と110年ぶりの高水準だった。1996年の投票率は51%。20年あまりで15ポイントも投票率が上がるのは先進国ではあり得ない。戸別訪問し投票所に連れて行く手法が定着しているため、今年も高くなりそうだ。

── 何が勝敗を分けそうか。

■激戦州で、両陣営のモチベーションがどれだけ強いかによるだろう。情報戦が勝敗を分けるかもしれない。民主党なら「トランプが復帰すれば妊娠中絶ができなくなるぞ」と、都市部で拡散する。共和党なら地方で、「ハリスが大統領になれば不法移民が大量に押し寄せる。銃も取り上げられるぞ」と有権者に耳打ちするといったことだ。

── 米国の分断、分極化は続くか。

■今後も続くだろう。96年大統領選の年、私は米国に住んでいた。当時は今のような分極ではなく、有権者はもっと中道だった。選挙でも中道の支持を得れば勝機をつかめた。両党の支持層が右と左に離れて、分断・分極化がこの二十数年で固まってしまった。

(前嶋和弘・上智大学総合グローバル学部教授 聞き手:浜田健太郎/稲留正英/安藤大介・編集部)

◇人物略歴

まえしま・かずひろ 1965年静岡県生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒。ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了、メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了。2014年から現職。