ハマスを「自滅」させるには─テロ組織の専門家が語る、組織解体の6つの「歴史的類型」

AI要約

米カーネギーメロン大学研究所のオードリー・カース・クローニンは、テロ組織の終焉についての研究結果をまとめ、軍事的鎮圧が有効な場合もあるが、多くの場合には効果が薄いことを指摘している。

イスラエルがガザでのテロ組織ハマスに対して軍事力を行使しているが、攻撃が一般市民にも影響を及ぼし逆効果となっている可能性がある。

ハマス支配に疑念を抱いていたガザの市民をハマスへ接近させる結果となり、国際社会の支援を排除することで状況を悪化させている。

ハマスを「自滅」させるには─テロ組織の専門家が語る、組織解体の6つの「歴史的類型」

米カーネギーメロン大学研究所、戦略・技術局長を務めるオードリー・カース・クローニンは、戦略的な観点からテロとの闘いを考察している。

過去150年間にわたる457余りのテロ組織、テロ活動を調査し、彼女はテログループ「消滅」のための6つの歴史的類型を規定した。それは、「失敗」、「成功」、「交渉」、「リーダーの捕縛・暗殺」、「軍事的鎮圧」、そして「グループの変化」である。

『どのようにテロは終わるのか:テロ活動の衰退と終焉についての考察』(未邦訳)の著者でもあるクローニンに、ハマス終焉に向けて起こりうるシナリオ、そして、イスラエル政府の対応への評価を聞く。

──あなたの研究によると、「軍事力による鎮圧」は、テログループ終焉の6つの戦略のうちの一つです。2023年10月7日の攻撃以降、イスラエルはその方向性をとっていますが、それは効果的なのでしょうか?

一般的に言って、軍事的鎮圧の戦略は両陣営にとって高くつきます。そして現代史においては、テログループを崩壊させるという目的に対して、それほどの結果を残していません。

1990年代のチェチェン分離派に対するロシアの攻撃を例にとると、ロシアはチェチェンの主要分離派グループに壊滅をもたらしましたが、同時に2万5000人以上の市民の犠牲と何十万もの難民を出し、コーカサス地方全体に脅威を波及させました。

他にも例はあります。それから十数年後、スリランカ政府は、タミル人テロ組織「タミル・イーラム解放のトラ」を根絶しようと軍事力を用いました。結果として指導者たちは潰されました。しかし、このときにも何万人もの市民が殺されるという損失が伴っていました。

私の研究によると、軍事的鎮圧が有効なのは、標的となるテログループのメンバーが一般人と分離できる場合のみです。その場合でも、市民の自由は侵食され、国家組織、とりわけ民主主義はダメージを受けます。

攻撃の際に、市民とテロリストとの明確な区別がつきにくいのは言うまでもなく、民衆と国際社会は、軍事的鎮圧で政府が実際に「何を守ろうとしているのか」を疑問視します。イスラエルもこの法則を逃れることはできません。

──軍事的鎮圧という戦略は、本質的な理由からガザで失敗に終わるのでしょうか、それともイスラエルのやり方が悪いのでしょうか?

2023年10月7日のテロ攻撃への反応として、イスラエルは、より慎重な軍事作戦を選択することもできたはずです。しかし、テロリストと一般市民との区別をつけずに、非常に破壊的な攻撃をおこない、ガザでの人道的支援を制限しています。その戦略は逆効果です。

ある意味、イスラエルはハマスを助けています。というのも、長い間ハマス支配に対して疑念を持っていたガザの一般的なパレスチナ人たちを、ハマスに接近させたからです。国際社会の支援をないがしろにしたことは言うまでもありません。