ストーンヘンジの祭壇石はどこから? 100年来の説を覆す新研究

AI要約

英イングランドの巨石遺跡ストーンヘンジの中心の「祭壇石」がスコットランド北東部から輸送されたことが5000年前の研究で判明

新石器時代の人々の能力と長距離交易網についての新たな知見が得られた

鉱物粒子の分析から、祭壇石の原産地がスコットランドであり、ウェールズでないことが示された

ストーンヘンジの祭壇石はどこから? 100年来の説を覆す新研究

(CNN) 英イングランドの巨石遺跡ストーンヘンジの中心にある「祭壇石」について、およそ5000年前に、700キロ以上離れた現在のスコットランド北東部から現在の場所まで輸送されたという研究結果が発表された。

8月14日の科学誌ネイチャーに発表されたこの研究は、祭壇石の産地が現在の英ウェールズだったとする100年来の説を覆す内容だった。環状の巨石群の中央にある祭壇石は、ストーンヘンジの建造に使われたブルーストーンの中で最も大きく、6トンの重さがある。

「この石は恐ろしく長距離、少なくとも700キロを旅してきた。この時期の石碑に使われた石の輸送距離としては、記録に残る限りで最も長い」。論文共著者でウェールズのアベリストウィス大学教授のニック・ピアース氏はそう解説している。「当時としては驚異的な距離だった」

今回の研究によってストーンヘンジにまつわる多くの謎の一つが解けると同時に、文字による記録を残さなかった新石器時代の人々の間のつながりを含めて、過去に関する理解を深める新たな道が開けたと論文は記している。

研究チームによると、ストーンヘンジは紀元前3000年ごろから複数の段階を経て建造された。祭壇石は紀元前2620~2480年ごろの第2次建設期、馬蹄(ばてい)形に並べた巨石の中央に配置されたと考えられている。

祭壇石の産地がスコットランドだったことは、古代の英国と当時の人々がはるかに進んでいて、恐らく海上ルートで巨岩を運ぶ能力があったことを物語る。

ストーンヘンジを構成する石の種類についてはここ数年で重点的な研究が行われていた。これまでの調査で、砂岩の一種であるブルーストーンと、サルセンと呼ばれるケイ化した砂岩のブロックがストーンヘンジの建造に使われたことが分かっている。この遺跡は5000~6000年も前から人が住んでいたソールズベリー平原の南端にある。

サルセン石の産地は25キロほど離れたマールボロ郊外のウェストウッズだった。一方、ブルーストーンはウェールズ西部ブレセリヒルズ産のものがあり、ストーンヘンジに最初に配置されたのがブルーストーンだったと考えられている。祭壇石はブルーストーンに分類されているが、産地はこれまで謎だった。

論文共著者でオーストラリア・カーティン大学教授のクリス・カークランド氏によると、スコットランドからイングランド南部まで陸路で巨岩を輸送するのは相当の困難が予想されることから、英国沿岸の海上輸送ルートが使われた可能性が大きい。「つまり、長距離交易網と、これまで考えられていたよりも高いレベルの社会機構が新石器時代の英国に存在していたことをうかがわせる」

祭壇石の産地について理解を深めるため、研究チームはこの石の断片に含まれる鉱物粒子の年代と成分を分析した。

その結果、断片の中にあるジルコン、燐灰石、金紅石の存在が明らかになった。ジルコンの年代は10億~20億年前、燐灰石と金紅石の年代は4億5800万~4億7000万年前だった。

論文の筆頭著者でカーティン大学院生のアントニー・クラーク氏によれば、研究チームがこの分析結果をもとに、欧州各地の堆積(たいせき)物や岩石と照合したところ、スコットランド北東部のオルカディアン盆地にある旧赤色砂岩と呼ばれる堆積岩層と一致することが判明した。この岩石は、ウェールズ産の岩石とは完全に異なっていた。

「この発見は興味深い疑問を生じさせる。新石器時代の技術的制約を考えると、紀元前2600年ごろにこれほどの巨岩をどうやって長距離輸送したのか」とクラーク氏は問いかける。