ドイツを悩ます「大家族犯罪」 法より「一家のおきて」重視で凶行や迷惑行為に関与

AI要約

ドイツでは近年「大家族犯罪」が問題になっており、犯罪グループが大規模な家族や一族を形成して凶悪な事件を起こしている。

この問題は特にアラブ系大家族やマラミエ・クルド人を中心に広がっており、ノルトライン=ヴェストファーレン州などで多くの大家族が犯罪活動を行っている。

過去には巨大金貨の盗難事件や氏族同士の暴力沙汰などが起き、犯罪が増加傾向にある。

ドイツを悩ます「大家族犯罪」 法より「一家のおきて」重視で凶行や迷惑行為に関与

ドイツでは近年「大家族犯罪」が問題になっています。日本語で「大家族犯罪」と言うと聞き慣れない言葉のようですが、ドイツのメディアでは近年Kriminalität durch arabische Großfamilien(和訳「アラブ系大家族による犯罪」)やClan-Kriminalität(和訳「クランによる犯罪」)という言葉を用いて、近年ドイツで起きている凶悪な犯罪について報道しています。(サンドラ・ヘフェリン=コラムニスト)

「大家族」に厳密な定義はありませんが、一般的にドイツに移民してきた歴史背景を持つ民族集団で、一族の長を中心に、大勢の子どもだけでなく、いとこや結婚で結ばれた姻族も含み、ドイツ生まれの2世、3世も含む大きな集団を指します。一つの大家族が数百人規模、数千人規模であることも珍しくありません。

「大家族犯罪」について、ドイツの刑事警察はほかにMhallamiye-Kurden(和訳「マラミエ・クルド人」)(※1)という言い方もしています。

ドイツの連邦刑事庁(BKA)によるとドイツには約200万人のマラミエ・クルド人が住んでいます。その数はベルリン、ブレーメンやニーダーザクセン州など北部や、西部ノルトライン=ヴェストファーレン州などに集中しています。

ノルトライン=ヴェストファーレン州の州刑事局(LKA)によると同州には50以上の「犯罪的大家族」が存在するとのことです。詳しくは後述しますが、彼らの多くは1975年のレバノン内戦をきっかけに1970年代や1980年代にベイルートからドイツにやって来ました。

昨年、ドイツのメディアFocusは「2022年、ノルトライン=ヴェストファーレン州で大家族による犯罪が20.3%増えた」と報じ、ドイツの首都ベルリンでもRemmo(媒体によってはRammoと表記)、Abou Chaker、Al-Zein、MiriとOmeiratらの大家族が「犯罪分野においてますます力をつけている」としています。

大家族による有名な犯罪には、2017年にベルリンで起きた「ボーデ博物館の巨大金貨盗難事件」があります。この事件では375万ユーロ(現在の換算レートでは約6.3億円)の100キロの純金の巨大金貨が盗まれましたが、実行犯3人はいずれもRemmo氏族の人物だということが判明しています。

ハーメルンの病院前で、ある大家族が大乱闘し病院が一時閉鎖された事件、ベルリンの貸金庫でMiri氏族が約85億相当の現金や貴重品を強奪した事件など数多くの事件がある中、「氏族間の暴力沙汰」も目立ちます。

2021年7月にはベルリンのホームセンターの駐車場で氏族同士が大人数でけんかをした際、氏族Aの男性が氏族Bの男性にナイフで刺されました。すると刺された氏族Aの親族が複数現れ、氏族Bの男性がピストルで撃たれる事件が起きています。トラブルの原因は違法な「みかじめ料」でした。