「親たちよ、おもちゃを捨てよ」そう訴えたベストセラー著者の娘のおもちゃ事情

AI要約

ベストセラー著者マイクリン・デュークレフと娘のロージーの日常生活について。デュークレフは子育てにおいておもちゃを抑え、スクリーンから遠ざける教育方針を貫いている。また、ロージーは物事を管理する能力や責任感が強いことが特筆される。

デュークレフは直接的なアプローチに反省し、穏やかに子供に向かうことを学んでいる。また、周りからの批判に頓教しないように、親同士が互いに支え合うべきだと提言している。

親子の関係や子育てに関する洞察を提供するエピソードを通じて、子供のやる気を引き出す力や良い習慣を教える重要性を強調している。

世界を旅して「子育て」を学び、欧米諸国に影響を与えたベストセラー著者のマイクリン・デュークレフ。出版から3年、娘のロージーは8歳になった。彼らはいま、どのように過ごしているのだろうか。おもちゃは持っている? スクリーンは見ている? 仏紙「ル・モンド」が聞いた。

マイクリン・デュークレフの著書『狩猟、採集、育児:古代文化が教えてくれる、ハッピーでヘルプフルな小さな人間を育てる、失われた技術』(未邦訳)は、世界の諸文化における先祖伝来の育児を扱った一風変わった本だが、多くの国で予想外のベストセラーを記録している。

米国人のデュークレフは化学分野での博士号を取得後、米ラジオ局「NPR」の科学ジャーナリストになった。当時3歳だった娘のロージーがかんしゃくを起こすのを見て、自分とは異なる文化の親たちは、こういった状況にどう対応しているのだろうかと疑問に思い、ロージーを連れて世界を巡る旅に出る。

カナダのイヌイット、タンザニアのハッザ族、メキシコのマヤ族などを訪ね歩き、旅を終えた彼女が気づいたこと、それは「西欧文化の子供たちはおもちゃを与えられ過ぎていて、自分の手で何かをする機会が充分ではないこと」。そして親は「ちょっとした見ぶりでわかるようなことにもやかましく口を開き、褒め言葉やアドバイスや命令などを発し過ぎている」ということだった。

3年後、彼女は夫と娘、飼い犬のジャーマン・シェパードとともにサンフランシスコを離れ、メキシコ国境近くの街、テキサス州アルパインに移り住んだ。子供が一人でも移動できるような、小さな町を探したという。

ロージーは現在8歳。犬の散歩やお菓子作りをしてお小遣いをもらっている。そして、母親であるデュークレフの教育方針は、いまもまったく変わっていない。

──初めて自分を母親だと感じたのはいつですか?

それは、初めて自分を「無能な母親」だと感じた瞬間でもありました。私はベッドに横になりながら、娘が起きるのを待っていました。母親として娘にどう接したら良いのか、どうやって娘が必要とする母親になれるのかわからなくて、「恐れていたときが来た」と思いました。

──嫌だと感じていたご両親の態度をあなた自身も繰り返していたのでしょうか?

とにかく短気なんです! ときどき娘に手伝いを頼むのですが、すぐに取りかかってくれないと苛立ってしまって……。私の両親もそうでした。「言われたことをやりなさい!」「いますぐ!」「お母さんが頼んでるんだから!」と。

おかしいですよね。娘が私に手伝いを頼んでも(それが娘ではなく誰であっても)、私は飛び起きて駆け付けるなんてことはないのに。だから、私に呼ばれたからといって娘が手を止めてやって来ると期待するべきではないのです。

娘が何かをやり終えようとしているときに、自分が急き立ててしまうのは嫌ですね。私たち大人だって、二つの仕事の間には時間を取って休みを入れる必要があります。大人がやらないことをどうして子供に求めるのだろう……と。

──彼女に読み聞かせているお気に入りの物語は?

「若草物語」です。

──ロージーが3歳のときに書かれた本では、おもちゃは無益なもので、西欧の子供たちはあまりにも自分中心的な世界のなかで成長していると述べられています。ロージーはいま8歳ですが、やはりおもちゃは持っていないのでしょうか。

少なくとも買い与えてはいません。その代わりに、工作や手作業で使える道具を買っています。絵を描くためのマーカーやクレヨン、絵具も持っていますし、針、糸、布といった裁縫道具、ピアノのキーボード、自転車、それに本もあります。

もちろん、友人や親戚からおもちゃをいただくことはあります。娘は少しの間、そのおもちゃで遊んでいますが、やがて興味を失います。少し経ってから「誰かに譲ってもいい?」と聞くと、これまでのところ、娘は毎回「いいよ」と答えています。

唯一の例外はレゴでした。クリスマスに誰かがくださった小さなレゴセットは娘の唯一のおもちゃで、彼女はときどきそれで遊んでいます。

──デジタル機器とはどう付き合っているのですか?

娘が生まれたとき、私たち夫婦はスクリーンに囲まれた生活をしていました。携帯電話、パソコン、iPad、テレビなどです。ですが、ここ4年の間に私たちはそれらをすべて手放しました。

私は仕事用にパソコンを一台持っていますが、それ以外、テレビもNetflixもApple TV+も何もありません。SNSもYouTubeもいっさい見ません。

書斎の引き出しには、家族用の携帯電話があって、私は1日に2回チェックしますが、5分とかかりません。携帯電話を家の外に持ち出すこともありません。

読書をしたり、裁縫や庭仕事をしたり、自転車に乗ったりして過ごしています。スクリーンに囲まれた生活に戻るとは思えません。あまりにもピリピリしますし、時間の無駄です。それに、スクリーンがないと、夜よく眠れますから。

──あなたが親として優れていると思う性質は何ですか?

子供のやる気を引き出す力だと思います。子供たちが家の片づけをしたり、互いに仲良くしたり、何かを分け合ったりするよう導くのが上手だと思っています。

そのために、ご褒美をあげたり脅したりする必要はありません。目的を持つ、チームで動く、好きな人たちを助ける、そういった子供の欲求に訴えるのです。子供たちは集団生活に貢献できる機会を喜びますから。

──では、親として未熟だと感じるところは?

あまりにも直接的なところです。特に教育に関しては、直接的過ぎて人を怒らせてしまうこともありました。もっと穏やかに、率直になり過ぎずに自分の考えや助言を伝えることを学ぶ必要がありました。

西欧文化では、人々は決まって親を批判します。こうした周りからの評価のせいで、親たちは聞こえてくる助言や批判の声にとても敏感になっています。私としては、親たちは互いに批判しあうのは止めて、互いに支え合うためにもっとエネルギーを使うべきでしょう。

──あなたがロージーにイライラしてしまうのはどういったときでしょうか?

苛立つ必要もないような些細なことです。バスルームの床にタオルを置きっぱなしにしているとか、朝ごはんの後に片付けをしなかったとか。イライラする代わりに、娘に良い習慣を教えてあげようとすべきなのです。苛立ちは怒りを生むだけですから。

──ロージーについて、すごいなと思う点はありますか?

娘はものすごく上手に物事を管理ができて責任感が強いのです。まだ8歳ですが、いろいろなことを自分で計画しますし、宿題も自分でやっています。