バングラデシュの「Z世代のリーダー」が84歳の老経済学者の政権入りを要求した「真っ当な理由」

AI要約

バングラデシュで発生した学生デモが政府職員の特別採用枠の撤廃から始まり、シェイク・ハシナ首相の亡命まで続いた。暫定政府が樹立され、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌスが首席顧問に任命された。

学生リーダーのナヒド・イスラムを中心に行動したZ世代による成功例として評価され、ユヌスはマイクロファイナンスで知られ、政府との対立も経験していた。

ユヌスは混乱した国内の秩序回復と経済の停滞防止を課題とし、早急な民主的な政権移行を目指す。彼には国を安定させる重要な役割が与えられている。

バングラデシュの「Z世代のリーダー」が84歳の老経済学者の政権入りを要求した「真っ当な理由」

7月初頭からバングラデシュでおこなわれた学生デモは、政府職員の特別採用枠の撤廃の要求から、シェイク・ハシナ首相追放運動へと発展し、約300人の死者を出したのち、8月5日のハシナの亡命で幕を閉じた。

軍はハシナ亡命の際、暫定政権を樹立すると述べたが、学生グループは「われわれが推薦した政府以外はいかなる政府も受け入れられない」と表明。結局、学生グループの要求通り、ノーベル平和賞受賞者の経済学者ムハマド・ユヌスを暫定政府の「監督者」に任命することが決まった。学生たちの要求がすべて通った形だ。

抗議グループのリーダーを務めたのは、ナヒド・イスラムという26歳の学生だ。コーネル大学の政治学者サブリナ・カリムは「ロイター通信」に対して、「これは、Z世代が主導する革命の初の成功例になるかもしれない」としたうえで「軍が関与するとしても、民主的な政権移行について一定の楽観的な見通しがあるだろう」と評価する。

暫定政府の首席顧問に選ばれたユヌスは、「グラミン銀行」の創立者で、通常の銀行の融資を受けられない貧しい人に少額融資をおこなう「マイクロファイナンス」を実践し、多くの人々の生活を救った功績により、2006年にノーベル平和賞を授与された。

同時にユヌスは、長年にわたって時の政権と対峙してきたという顔も持つ。2007年には、自らの政党を立ち上げて政界入りを目指したが、果たせなかった。その後はハシナ政権と対立し、ハシナはユヌスを「貧者から血を吸い取っている」と非難。国策捜査とも言われる数々の刑事訴訟にも直面した。他方で、ユヌスはハシナ政権を独裁的だと批判し続けた。

若い世代の学生グループが、現在84歳にもなるユヌスの顧問就任を要求したのは、彼が政治の世界においても長年「変化の象徴」として期待されていたからだとわかる。

米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、ユヌスには2つの課題がある。

第一に、デモ隊と治安部隊の衝突で混乱した国内の秩序の回復だ。国民との連帯を示し、弱い立場の人々を守る姿勢を打ち出す必要がある。

第二に、政治の混乱で経済が停滞しないように、各省庁を安定して率いることができる人材を迅速に任命することだ。

暫定政府の任期は次の選挙までだというが、それがいつおこなわれるかは確定していない。できるだけ早く民主的な政権に移行できるよう、国を安定させるという重要な役割が、ユヌスには与えられている。