ハニヤ氏暗殺 「賓客」守れなかったイラン、限定報復を検討か 米国との全面衝突は回避

AI要約

ハマス最高指導者ハニヤ氏がイランで暗殺され、イランはイスラエルによる暗殺と断定。報復を誓っており、全面衝突を避けつつ報復の規模を模索中。

過去の報復は限定的な形で行われ、戦闘拡大を避ける姿勢を示してきた。イランとイスラエルが直接戦争を避ける意向が伝えられている。

今回の報復は不透明だが、イスラエルの大都市周辺の軍事施設への攻撃や欧米諸国の商船への攻撃が検討されている。

ハニヤ氏暗殺 「賓客」守れなかったイラン、限定報復を検討か 米国との全面衝突は回避

【カイロ=佐藤貴生】イランの首都テヘランでイスラム原理主義組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏が殺害され、イランはイスラエルが暗殺したと断定して報復の規模や時期を探っている。ただ、イスラエルや後ろ盾の米国との全面衝突を避けるため、抑制された規模になるとの見方もある。

国営イラン通信は7月31日、最高指導者ハメネイ師が「ハニヤ氏の血に報いることは私たちの義務だ」と述べ、イスラエルへの報復を誓ったと伝えた。

イランは新大統領就任を祝福するため、首都を訪れたハニヤ氏の暗殺を許すという失態を犯した。「抵抗の枢軸」と称する中東各地の親イラン民兵組織や国民も注視しており、何らかの報復により汚名をそそぐべきだと考えているようだ。

イランはこれまで、米国やイスラエルへの先制攻撃を避け、報復も限定的な形にとどめてきた。2020年に革命防衛隊の有力司令官が米軍に殺害された際はイラクの駐留米軍基地に弾道ミサイルを発射したが、米兵が軽傷を負った程度で全面衝突は回避された。

今年4月にはイスラエルの在シリア大使館への空爆で革命防衛隊の幹部司令官が殺害されたとして、300超の無人機やミサイルでイスラエル領内を攻撃した。攻撃目標は軍事施設に限定され、米英仏が共同で防衛したため被害は軽微なレベルで収まった。

革命防衛隊の元幹部は6月、取材に「イランはイスラエルとの直接戦争は望まない。それはイスラエルも同じだ」と述べ、中東における戦闘拡大は双方ともに回避したいのが本音だとの見方を示していた。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、イランが今回も限定攻撃にとどめるかは「不透明だ」としながらも、イランではイスラエル西部テルアビブや北部ハイファなど、大都市周辺の軍事施設への攻撃が選択肢に浮上しているとした。

イエメンやイラク、シリアの民兵組織を通じ、紅海周辺を航行する欧米諸国の商船への攻撃を強化したり、駐留米軍施設を攻撃したりする可能性もありそうだ。