マレーシアでも反イスラエル不買運動が拡大 米系企業標的、政権は経済への打撃を懸念

AI要約

マレーシアでもパレスチナ自治区ガザの戦闘を巡る不買運動が広がっており、政府は対応に苦慮している。

マレーシアのアンワル首相は不買運動に警戒感を示し、親パレスチナの立場をとる一方で、現地への投資や雇用に悪影響が出る可能性を懸念している。

親パレスチナ団体が欧米系企業のリストを拡散し、不買運動が拡大する中、地元企業や従業員にも影響が及んでいる。

パレスチナ自治区ガザの戦闘を巡り、「親イスラエル」とみなされた米国系の企業や飲食チェーンを標的にした不買運動が、中東から離れた東南アジアのマレーシアにも広がっている。マレーシアではムスリム(イスラム教徒)が多数派で、アンワル政権は親パレスチナの立場を鮮明にしている。ただ、不買運動が拡大を続ければマレーシアへの投資や現地の雇用に悪影響が出る恐れがあり、政権は対応に苦慮している。

■政権は親パレスチナの立場だが…

「(米IT大手の)アップルやマイクロソフトとも取引を止めるのか? 非現実的だ」。マレーシアのアンワル首相は6月25日の閣議で不買運動の広がりに警戒感を示した。

アンワル氏は、ガザを支配するイスラム原理主義組織ハマスとの関係を維持するなど親パレスチナの姿勢で知られている。それにもかかわらず、最近は政府系の空港運営会社の株式売却計画に不買運動の矛先が向けられている。

運動を呼びかける親パレスチナ団体などが問題視しているのは、イスラエルと関係のある米資産運用大手ブラックロックが株式売却計画に関わっているということだ。シンガポール紙ストレーツ・タイムズ(7月2日電子版)によると、株式取得を目指す企業連合のうち1社を、ブラックロックが買収予定だという。

ブラックロックはマレーシアの上場企業約100社に投資しているとされる。空港問題がこじれてブラックロックがマレーシアから投資を引き揚げるようなことになれば、「数千人の雇用に影響する可能性がある」(投資貿易産業相)と政府は警戒している。

ストレーツ・タイムズは、政府が空港計画を撤回すれば、「正当なビジネスよりも、遠隔地の政治的配慮を優先するというネガティブな印象を与える」との専門家の見方を伝えた。

マレーシアでの不買運動は、親パレスチナ団体「BDS(ボイコット・投資撤収・制裁)マレーシア」がイスラエルに関係するとした欧米系企業のリストを拡散して広がった。リストに入った欧米系の飲食チェーンや食料品、化粧品を拒否するよう呼びかける若者らの動画投稿も相次いだ。

ただ、世界展開する飲食チェーンの多くは、現地企業が本社に権利料を支払って運営するフランチャイズ方式のため、地元企業や従業員にも打撃は避けられない。