浴衣、草履、畳敷き…スペインで和風のホテルが盛況 日本人が古民家を改修して開業

AI要約

12歳の時にカタルーニャに移住した佐野徹心さんが手がけるスペイン初の和風ホテルが大成功を収めている。部屋は畳が敷かれ、浴衣や草履が用意されており、茶道や書道などのアクティビティも楽しめる。また、環境に配慮したサステナブルな取り組みも行っている。

ホテルは山々に囲まれたカタルーニャ州ソルソーナにあり、バルセロナ市内からは車で2時間の距離。20代から60代までのカップル層に支持され、カタルーニャ州の地元の人々だけでなく、他地域からも多くの客が訪れている。

ホテルの建築はカタルーニャ人建築家と日本人建築家のコラボレーションによるもので、日本とカタルーニャの要素を融合させたデザインが特徴。今後は温泉の設置も計画している。

浴衣、草履、畳敷き…スペインで和風のホテルが盛況 日本人が古民家を改修して開業

スペイン初の和風ホテルが盛況だ。スペイン・カタルーニャの伝統的な農家の古民家をリフォームして開業したこのホテルは連日ほぼ満室。手がけるのは、12歳の時にカタルーニャに移住した埼玉県出身の佐野徹心さん。人気の背景には、「和風が珍しい」というだけではない、佐野さんなりの創意工夫があった。(ジャーナリスト・長谷川菜奈)

株式会社KEN OFFICE代表

ホテル業、旅行業、コーディネーションなどの仕事を行うKEN OFFICEを経営。12歳でスペインに移住。バルセロナの大学を卒業後、日系企業をへて現職。

ホテル「ジャポネスプッチュピノス」はスペイン・カタルーニャ州ソルソーナにある。山々に囲まれたのどかな農村で、夜は星がきれいだ。

サグラダファミリアのあるバルセロナ市内からは車で約2時間、公共交通機関ではやや便が悪いが、20代から60代までのカップル層に支持され、カタルーニャ州の地元の人々だけでなく、首都・マドリードや、大西洋に浮かぶスペイン領カナリア諸島からくる人もいるほど。部屋はいつもほぼ満室だ。佐野さんは言う。

「ホテルを目的にソルソーナまで来られる方が多いですね。先日いらしたカップルのお客様はマドリードから新幹線でバルセロナまで来て、そこからバスとタクシーを乗り継いでいらっしゃいましたよ」

到着すると、浴衣に着替え、草履に履き替える。部屋は畳が敷かれ、布団で眠りにつく。

トイレはウォシュレット付きだが、使い方を知らない人が多いため、部屋へ案内した際の説明は必須だ。

客を魅了する理由の一つは日本を体験できる空間にある。畳や浴衣などが用意されているほか、茶道や書道などのアクティビティに参加することもできる。

さらにホテルは「マシア」と呼ばれるカタルーニャの古民家をリフォームしていて、伝統的な建物の中で日本を味わえるデザインにも定評がある。

「リフォームするにあたってはカタルーニャ人建築家と日本人建築家にタッグを組んでもらいました。ホテルには和のエッセンスを取り入れたかったのですが、カタルーニャ人に“和のエッセンス”と言っても理解しきれないので、そこは日本人建築家に担当してもらい、木材を使ったミニマルな感じのデザインにして頂きました。一方で、マシア自体は石造りの家なので、カタルーニャの建築家の方が技術的に得意なんですね。日本とカタルーニャのいいとこどりで仕上げてもらいました」(佐野さん)

またホテルでは環境や森林保全の観点からサステナブルな再生可能エネルギーの使用比率を増やしている。例えばホテルのお湯はバイオマスヒーティングで生まれた熱源で作られている。森で間引きのため伐採された木をチップにして、それを燃やしてお湯を沸かしている。佐野さんは「カタルーニャでは森林が管理されず、荒れているところがあるんです。整備しないと山火事が起こってしまいます。なので、森林を綺麗にしながら、捨てるはずの木を再利用しています」と明かした。

また今年に入ってからはソーラーパネルを設置した。スペインでは日照時間が長く、特に夏は午後9時ごろも明るいため、バイオマスとソーラーを合わせれば大半の電力がまかなえるそうだ。「今は温泉づくりを計画していますよ」と佐野さん。スペイン人たちがゆったり温泉に浸かり、どんな反応を示すのか気になるところだ。