パリ五輪狙いロシアが「破壊工作」か…偽のテロ情報など拡散、トム・クルーズのフェイクでネトフリ番組の偽装も

AI要約

パリオリンピック(五輪)の開幕が迫るなか、偽情報拡散に対する警戒が高まっている。トム・クルーズの声を模倣したフェイク番組やフェイク映像が出回り、ロシアによる印象操作も警戒されている。

IOCは偽情報の標的になったことを認め、情報戦を用いて五輪を破壊しようとする勢力に警戒を呼び掛けている。ディープ・フェイクの番組や偽ニュース動画など、巧妙な手法で情報を操作する行為が増加中。

ネットフリックスの偽装番組や捏造映像は大手メディアまで巻き込み、偽情報が拡散されるなか、IOCは対抗措置を取らざるを得ない状況にある。

 パリオリンピック(五輪)の開幕が迫るなか、混乱を狙った偽情報拡散に対する警戒が高まっている。

 昨年にはトム・クルーズの声を模倣するなどしたネットフリックスのフェイク番組が拡散。今年6月、米マイクロソフトはロシアによる印象操作に警鐘を鳴らす報告書を発表した。

 ニュース番組や米中央情報局(CIA)など当局の広報番組を偽装したフェイク映像も出回っている。五輪を狙ったロシアの「破壊工作」が激しさを増している。

 (楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 パリオリンピック(五輪)開幕を目前に控えた7月20日、国際オリンピック委員会(IOC)は、今大会に関する偽情報を拡散する活動が既に進行しており、この状況下に耐えるしかないと述べた。IOC広報のマーク・アダムス氏は会見で「IOCが偽情報の標的になったのは今回が初めてでも、これが最後でもない。その手口は益々巧妙になっている」「残念ながら、我々が暮らす分断された世界では、こうした状況との共生を余儀なくされている」と話した。

 世界最大規模のスポーツの祭典を、情報戦を用いて破壊しようと目論むのは誰か。先のIOCのコメントは、ネットフリックスの番組を装って昨夏に制作されたディープ・フェイクの五輪関連ドキュメンタリーについての質問に応えたものだ。

 「堕ちたオリンピック(原題Olympics Has Fallen)」と題された4部構成のフェイク番組は、2013年の米映画「エンド・オブ・ホワイトハウス(原題Olympus Has Fallen・オリンパスは堕ちた)」のタイトルをもじったものと見られる。

 このフェイク番組では人工知能(AI)を用い、ハリウッドの大スター、トム・クルーズ氏の声を模倣したナレーションで展開している。クルーズ氏をまねたナレーションで、IOCの幹部らが大会期間中、いかにハリウッドスターなどよりも豪華絢爛(けんらん)なVIP生活を送っているかを「暴露」するなど、IOCの「腐敗」を追求し、貶める内容が並んでいる。

 ネットフリックスのロゴはもとより、米ニューヨーク・タイムズ紙やワシントンポスト紙、BBCなど、欧米の名だたるメディア企業による「5つ星評価」まで捏造する懲りようだ*1

。 *1:五輪関連の偽情報拡散を伝えるインドのニュースサイト「ファーストポスト」

 番組は通信アプリ「テレグラム」とYouTubeで公開されたが、後者に関してはIOCの要請により、プラットフォームから後日削除されている。

 捏造番組はこれだけではない。昨秋にはフランスの放送局ロゴを使った動画がテレグラムのチャンネルで拡散された。IOCが紛争の続くイスラエルとパレスチナ双方のパリ五輪参加を禁ずるための検討を行っているとの偽ニュース動画だ。昨年11月にこの件を報じた米ニューヨーク・タイムズ紙は、IOCが、いずれの動画についても「誰が」これらの偽情報を作成したのか言及しなかったと伝えている。