開催間近・パリ五輪、威信をかけて浄化したセーヌ川で本当に泳げるかは、「直前にならないとわからない」と専門家

AI要約

パリ・オリンピック直前、セーヌ川の水質改善に努力が注がれている。

かつては清潔だったセーヌ川が汚染され、遊泳禁止となった経緯がある。

パリ当局は14億ユーロを費やし水質改善に取り組んでいるが、まだ問題は残る。

開催間近・パリ五輪、威信をかけて浄化したセーヌ川で本当に泳げるかは、「直前にならないとわからない」と専門家

開催直前となったパリ・オリンピック。その開催にあたり、パリ市はセーヌ川を泳げるようにすると約束し、水質改善のためにかなりの努力をしてきた。

7月30日と31日には、トライアスロンの選手がセーヌ川を1.5キロメートル泳ぐことになっている。8月8日と9日には、マラソンスイミングの選手が10キロメートル泳ぐ予定だ。

7月17日、イダルゴ市長はセーヌ川で遊泳を果たし、その水質改善をアピールした。しかし、競技当日に泳げるかは、まだわからないというのが本音のようだ。

セーヌ川は水質の悪さから、1923年から最近まで遊泳が禁止されていた。オンラインメディア「カンバセーション」によると、1900年のパリ・オリンピックでは、7つの水泳競技がすべて川でおこなわれた。当時、セーヌ川の水はきれいで、泳いでも問題はなかったという。人間の排泄物は農場で堆肥として使うために回収され、川に流されることはなかった。

しかし、次第に他の肥料が使われるようになり、排泄物は回収されなくなった。下水道の整備も進み、20世紀初頭には、未処理の廃水がセーヌ川にそのまま流されるようになったという。水質低下に伴い、セーヌ川で泳ぐことは禁止された。

それから100年が経ち、パリ当局はセーヌ川の水質改善に14億ユーロ(約2400億円)を費やしてきた。一方、セーヌ川を泳げるようにするという計画は、パリ市民の嘲笑を買ってきたと、米メディア「ブルームバーグ」は報じる。彼らは長年、川から自転車や、洗濯機などの廃品が釣り上げられるのを目にしてきたため、懐疑的だったのだ。

汚れた川で泳ぐと、体調を崩すことがよくある。 2012年、ロンドン近郊でのテムズ川遠泳に参加した数百人は吐き気、下痢、腹部の痙攣、嘔吐などの症状を示し、4人が入院した。

パリ当局はさまざまな取り組みを通じて、水質を改善させた。しかし、6月の検査では、セーヌ川のある地点の水に含まれていた大腸菌のレベルは、スポーツ連盟が許可する上限の10倍だった。その原因は季節外れの降雨である。

パリでは排水と雨水が同じパイプを通っているため、雨がたくさん降ると下水システムが溢れてしまうことがある。しかし、そうなると未処理の廃水がセーヌ川に流れ込んでしまうのだ。6月は降雨が多く、水質が悪化した。

5月、下水の漏出を防ぐため、パリの地下には5万立方メートルの巨大な貯水池が建設された。これはパリの中心部近くでの局地的な暴風雨には有効だ。しかし、パリ一帯にある貯水容量を約5%増やすだけで、対策としては不充分だと、ソルボンヌ大学のジャン=マリー・ムシェル水文学教授は指摘する。