[社説]今や龍山にまで北朝鮮の「汚物風船」、直ちに対北朝鮮ビラの取り締まりを

AI要約

北朝鮮が飛ばした「汚物風船」が龍山の大統領室庁舎内に落ち、有害物質は発見されなかったが、安保惨事が発生した。尹錫悦政権の好戦的な態度と危機管理能力の不在が問題視されている。

大統領警護処は風船落下後に汚染性なしと確認し、追加措置は関係機関で検討が必要としている。

尹政権の抱える問題を示すこの事態は、龍山庁舎の位置決定を巡る論争や好戦的な態度が背景にある。政府は対北朝鮮ビラの取り締まりを優先すべきだ。

 北朝鮮が飛ばした「汚物風船」が龍山(ヨンサン)の大統領室庁舎内に落ちた。有害物質は発見されなかったというが、国家の最高統治機関が北朝鮮の脅威に直接さらされるという「安保惨事」が発生したのだ。さらにこの事態は、偶発的な一回性の事故ではなく、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の好戦的な態度と危機管理能力の不在のせいで生じた「構造的危機」だ。政府は「対北朝鮮拡声器放送」で北朝鮮を手なずけるなどという役立たずな意地を捨て、北朝鮮がこれ以上汚物風船を飛ばさないよう現実的な対応を取るべきだ。

 大統領警護処は24日、「北朝鮮が飛ばした対南ゴミ風船について、合同参謀本部との協力を通じたモニタリング中に、龍山庁舎一帯に落下したゴミを識別した」、「化学生物放射能兵器対応チームによる調査の結果、物体の危険性および汚染性はないことが確認されたため、回収した」と発表した。大統領室の当局者は、「事案の深刻さは認知している」としながらも、「追加措置や対応策については、関係機関でもう少し綿密に検討が必要な事項」だと述べるにとどまった。風船にどんな物質が入っているのか分からないため、無理に落とすのではなく落下後に処理するとの方針を維持する、という意味だと解釈される。

 この事態は、就任から2年を超えた尹錫悦政権の抱える様々な問題を圧縮して示している。そもそも今回の事態は、2022年3月に大統領職引き継ぎ委員会が執務室を龍山に移すと発表した時から予想されていたことでもある。軍事専門家たちは当時、山のような自然の防御壁のない都心のど真ん中に大統領室などの国の主要統治施設が建設されれば、対空防衛が難しいとして、再考を要求していた。しかし尹大統領はこれを聞かず、当時指摘された問題が今、現実化しているのだ。昨年1月に北朝鮮の無人機が大統領室周辺に設定された「飛行禁止区域(P-73)」を侵犯したのに続き、今度は汚物風船が庁舎の敷地内に落ちたわけだ。

 事態をさらに大きくしているのは、尹大統領の好戦的な態度だ。北朝鮮は、自分たちが汚物風船を飛ばすのは脱北民が北朝鮮にビラを散布しているからだ、との立場を重ねて明らかにしてきた。韓国国民の安保を脅かす事案に直面した政府は、対北朝鮮ビラの取り締まりを優先すべきだ。この問題で自尊心を掲げるべきではない。しかし政府は9・19軍事合意を事実上破棄し、北朝鮮に対する拡声器放送の再開など、強対強対決へと突き進んでいる。

 今回の事態は単にやり過ごすべきではない。尹大統領は国民の前で謝罪し、今からでも対北朝鮮ビラを取り締まるべきだ。

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