トランプ氏「私とはうまく付き合う」 金正恩委員長にジェスチャー…「独裁者調教師」を誇示(1)

AI要約

トランプ前大統領が共和党大統領候補指名受諾演説で示した、対外政策の指導者像とその方針についての要約。

トランプ氏は北朝鮮の金正恩委員長との関係を強調し、トップダウン方式や核・ミサイル問題の解決を目指す姿勢を打ち出している。

北朝鮮がトランプ氏の意図をどう受け止めるか、また金正恩委員長が追加の挑発をする可能性についての展望。

トランプ氏「私とはうまく付き合う」 金正恩委員長にジェスチャー…「独裁者調教師」を誇示(1)

「金正恩(キム・ジョンウン)のような独裁者も思いのままに扱うことができる米国大統領、同盟が米国を財物を奪うのを放置しない大統領、いかなる助けや連帯がなくても中国に勝つことができる大統領」。

18日(現地時間)の共和党大統領候補指名受諾演説に表れた、トランプ前大統領が対外政策の側面で目指す指導者像を要約するとこうだ。この日の93分間の演説から推察できるトランプ政権2期目の外交・安全保障政策の方向は1期目と大きく変わらなかった。

特にトランプ氏は北朝鮮の金正恩国務委員長に言及しながら「私は金正恩ととてもうまく付き合った」と述べたが、これは自身が「独裁者を扱うことができる強い指導者」という点を強調するためと解釈される。

◆モラトリアムアゲイン? 見返りは未知数

トランプ氏はこの日の演説で「私は北朝鮮の金正恩ととてもうまく付き合った。彼も私にまた会いたいはずであり、私を懐かしく思うだろう」とし「核兵器や他の武器を多く持つ人とうまく付き合うのはよいことだ」と述べた。

トランプ氏は20日のミシガン州グランドラピッズでの演説でも「金正恩に米国で野球を一緒に観戦しようと提案した」というエピソードまで伝えた。また「金正恩は多くの核兵器を持つが、私は彼とうまく過ごした」とし「彼は核兵器を買って作ることばかり望むが、私は彼に『緊張を解いてリラックスするのがよい』『(ニューヨーク)ヤンキースの野球の試合も見に行こう』と言った」と伝えた。

トランプ氏が連日、金正恩委員長との「良い関係」を強調するのは「自分が大統領だった当時はもっと安全だった」という点を強調する意図があると解釈される。自身は金正恩委員長をはじめ、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席など権威主義国家の首脳も制圧できるという趣旨だ。トランプ氏は受諾演説で、「ロシアは彼(トランプ氏)を恐れ、中国も彼を恐れた」というハンガリー首相の発言を伝えたりもした。

また「我々は北朝鮮のミサイル発射を止めたが、北朝鮮は今また言うことを聞かなくなっている」とし、北朝鮮の核・ミサイル モラトリアム(猶予)を成果として言及したりもした。再選時に金正恩委員長との関係を基礎に電撃的な朝米首脳会談再開など「トップダウン」式の接近法を見せたり、核・ミサイル開発の凍結で終わる「スモールディール」をしたりすることが懸念される部分だ。

梨花女子大の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授(北朝鮮学)は「受諾演説などから確認できるトランプ2期目の対外政策の核心原則は、大統領中心のトップダウン方式への回帰」とし「ただ、トランプ氏はすでに2019年に金正恩委員長を扱い、この問題が簡単に解けない性格ということを誰よりもよく知っている」と指摘した。

実際、トランプ政権1期目も米国が北朝鮮の望む「贈り物」を与えたことはなかった。実際、悩んで決心したモラトリアムの代価として何も受けることができなかったというのが、北朝鮮が抱いた不満の骨子だった。トランプ氏が金正恩委員長に言及すること自体が当時の朝米交渉を「儲かる商売」として認識している可能性がある。

これに対し、トランプ氏が表面上では金正恩委員長と友好的な関係を維持したまま、ウクライナ問題、イスラエル問題のように可視的な成果が出る問題に集中し、韓半島(朝鮮半島)問題は後回しにするという見方も出ている。

◆金正恩委員長、「危険な信号」受け入れるか

繰り返し金正恩委員長に言及するトランプ氏の意図を北朝鮮がどう受け止めるかも注目される。金正恩委員長が自身にジェスチャーを見せたトランプ氏に「ベッティング」するため、11月の米大統領選挙直前に高強度の挑発をする可能性も排除できない。バイデン政権の安保無能を浮き彫りにし、大統領選挙で存在感を浮き彫りにするためだ。

これに関連し申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官は年初のインタビューで「米大統領選挙前に大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射や7回目の核実験など高強度の挑発で自分たちに有利な戦略環境を形成する動きを見せるかもしれない」と話した。具体的に9月を核実験の時期と予想したりもした。

仮に北朝鮮が追加でICBM挑発をする場合、固体燃料を基盤とする火星18型を改良して高角発射する可能性がある。まだ不足する大気圏再進入技術を獲得するため、弾頭部の削磨現象の点検が可能な中距離ミサイル代替実験などをする可能性もある。

ただ、金正恩委員長もトランプ氏を一度相手にしているだけに大きな期待を抱かないという分析も出ている。統一研究院のホン・ミン研究委員は「米国が非核化の立場を堅持したハノイ・ノーディール(2019年2月の第2回米朝首脳会談)事態を学習した金正恩委員長は、簡単にはトランプ氏との対話に応じないかもしれない」と分析した。ホン研究委員は、ひとまずロシアという「後ろ盾」を得た金正恩委員長が今後、米ロ関係の行方やトランプ2期目の具体的な対外政策方向を眺めた後に行動するだろう、という分析も出した。

国立外交院のチェ・ウソン教授は「金正恩委員長としては安全保障のための時間を稼ぐためにも、トランプ氏の再執権の序盤には融和的な態度を見せる可能性がある」としながらも「2人がまた会うイベントのほか、実質的に非核化交渉が進展する可能性は高くない」と予想した。