クロマグロの漁獲枠「倍増」案で、日本が国際社会に総すかんを食らった悲しい事情

AI要約

釧路市で行われた太平洋クロマグロの漁獲量をめぐる国際会議で、日本の漁獲枠増加提案が受け入れられず、米国や韓国の案が採択された。

ISCの分析によると、太平洋クロマグロの産卵資源量は劇的に回復し、漁獲削減の効果が確認された。

現行の漁獲枠制限を継続すれば、2041年時点でも目標の水準を維持できる見込みが出ていた。

クロマグロの漁獲枠「倍増」案で、日本が国際社会に総すかんを食らった悲しい事情

 北海道・釧路市で行われた太平洋クロマグロの漁獲量をめぐる国際会議が行われた。漁獲枠を大幅に増やす日本の提案は受け入れられなかった。太平洋クロマグロの最大の漁獲国であり、最大の消費国でもある日本は、なぜ交渉の主導権を失ってしまったのだろうか。(経済ジャーナリスト 樫原弘志)

● 太平洋クロマグロの漁獲枠見直し 背景に資源量の劇的回復

 7月16日まで北海道・釧路市で開催された太平洋クロマグロの漁獲量をめぐる国際会議では、大型魚(30キログラム以上)の漁獲を現行より131%増、つまり2.31倍とし、小型魚(30キログラム未満)も30%増とする日本の提案は退けられ、米国や韓国が推す大型魚50%増などとする案で決着した。

 今回、釧路で開催されたのは2つの国際会議だ。中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)と全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)による合同作業部会と、WCPFC北小委員会である。

 太平洋クロマグロは日本周辺で生まれ、米国やメキシコの沖合まで広く回遊する魚だ。そのため、毎年、太平洋の東側の漁場を管轄するIATTCと、西側の漁場を管轄するWCPFCが規制内容をすり合わせている。

 WCPFCは2015年の会議で小型魚の漁獲を基準となる漁獲量(2002~2004年の平均漁獲量)の半分に減らす措置を決定し、2年後には大型魚の漁獲も基準値を上回ることがないよう抑制することを決め、それぞれ翌年から実行している。

 今春、北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)がまとめた分析によると、太平洋クロマグロの産卵資源(親魚)量は過去12年間で劇的に回復していて、回復の目標としていた「初期資源量の20%」という水準を2021年に達成していたことが確認された。漁獲削減・抑制の効果がはっきりと表れてきたのである。

● 日本は漁獲枠の大幅増を提案 他国から厳しい批判

 資源回復の流れの中で、大型魚についてはすでに2022年から15%の増枠を実施していた。しかし、今回のWCPFCとIATTCの合同作業部会は、規制開始以来初めてとなる小型魚の増枠を含めて本格的な漁獲上限の見直しを話し合うことになっていて、大きな注目を集めていた。

 ISCのクロマグロ研究者らはWCPFCとIATTCからの依頼を受け、大型魚、小型魚のそれぞれの扱いや、太平洋の東側と西側の比率の調整などを考慮して合計18の漁獲シナリオを用意し、親魚量に与える影響を試算した。

 現行の制限をそのまま継続するなら、およそ20年後の2041年時点でも初期資源量の20%水準という現在の目標レベルを維持できる確率は100%、初期資源量の40%以上の水準にまで高めることができるとの結果が出ていた。