劇的展開で「トランプ党」最高潮 「米国第一」の忠臣起用 共和大会で候補正式指名・大統領選〔深層探訪〕

AI要約

トランプ前米大統領が2024年大統領選の候補に指名され、副大統領候補にはバンス上院議員が起用された。

トランプ氏は暗殺未遂事件から生還し、党内での支持が高まっている。

トランプ氏は過去の逆境を乗り越え、有利な状況で再度大統領選に挑むこととなった。

劇的展開で「トランプ党」最高潮 「米国第一」の忠臣起用 共和大会で候補正式指名・大統領選〔深層探訪〕

 トランプ前米大統領(78)が15日、共和党全国大会で2024年大統領選の候補に正式指名された。直前の暗殺未遂から生還する劇的な展開で、「迫害された殉教者」の物語を体現したトランプ氏。副大統領候補には「米国第一」のスローガンを象徴する忠臣バンス上院議員(39)を起用し、今や「トランプ党」と化した共和党内での求心力はかつてないまでに高まった。

 ◇進む純化

 「トランプ!  トランプ!  トランプ!」。13日の銃撃からわずか2日後の党大会初日、トランプ氏が会場に現れると、聴衆は割れんばかりの歓声と拍手で迎えた。負傷した右耳をガーゼで覆った姿は、同氏自ら「死んでいたかも」と語る事件の深刻さを生々しく想起させた。

 会場は開幕直後から高揚感に満ちていた。約2400人の代議員は大挙して前大統領に投票し、基調講演者たちはこぞってトランプ氏を「『米国第一』運動の父だ」(グリーン下院議員)と礼賛。団結ムードは最高潮に達した。

 象徴的なのは、副大統領候補に中西部オハイオ州選出のバンス氏を起用したことだ。同氏は白人貧困家庭の悲哀を描く著書「ヒルビリー・エレジー」で名をはせた、トランプ派の若手代表格。「ラストベルト(さびついた工業地帯)」に暮らす白人労働者の支持を集めて16年大統領選を制したトランプ氏にとって、新たな支持層の開拓ではなく、原点回帰と「純化」路線を意識した人選と言える。

 ◇重なる「奇跡」

 16、20年に続く3度目の党指名を得るまで、逆境は続いた。20年大統領選の敗北を覆そうと連邦議会襲撃事件を引き起こし、4件の刑事事件で起訴。不倫相手への口止め料不正処理事件で有罪評決を受け、党穏健派の離反が常にトランプ氏を悩ませた。

 だが、13日の銃撃事件で状況は一変。高齢不安が高まるバイデン大統領(81)の選挙戦継続を巡り内部対立に明け暮れる民主党を尻目に、凶弾を受けて立ち上がり拳を突き上げる姿は、党内の反トランプ派を黙らせた。

 大会開幕と重なる15日、トランプ氏が国防機密を不法に所持していた事件で、フロリダ州の連邦地裁は公訴を棄却。重大な刑事裁判で大統領選前に有罪判決を受ける可能性は、事実上なくなった。本選を4カ月後に控え、トランプ氏には奇跡とも言うべき強烈な追い風が吹いている。

 文字通り絶体絶命の危機を乗り越えたことで、「米国を一つにする機会が与えられた」と語ったトランプ氏。その一方、議会襲撃に関する刑事裁判を「作り話」だと強弁して起訴取り下げを求める姿には、自身が招いた政治的暴力への改悛(かいしゅん)は見いだせない。国家団結を掲げるその言葉が本物なのか、有権者は18日の指名受諾演説を見守っている。(ミルウォーキー=米ウィスコンシン州=時事)