フランス議会選挙 混迷極める政権発足への道 極右誕生回避も「いばら」は続く

AI要約

フランスの国民議会選挙で極右政権の誕生が回避されたが、政治体制には制度疲労が見られる。

左派連合が最大勢力となりながらも、政権樹立は困難であり、極左の参加についても不安が残る。

安定した政権形成が難しく、議会の内閣不信任に直面する可能性が高い状況である。

フランス議会選挙 混迷極める政権発足への道 極右誕生回避も「いばら」は続く

 政治体制が制度疲労を起こしているフランス。極右政権誕生こそ回避したが、得票率をみると、一時しのぎのままでは極右や極左がさらに伸長する可能性がある。

◇極右の政権奪取は先送り

 極右政党「国民連合(RN)」による政権奪取が不安視されたフランスの国民議会(下院)選挙では、主要左派政党が選挙直前に結成した左派連合「新人民戦線(NFP)」と、マクロン大統領を支持する与党連合「アンサンブル(ENS)」が、反極右票の分断を恐れて決選投票に出馬する候補を一本化したことで、左派が大逆転で勝利した。

 フランス史上初の極右政権の誕生をどうにか阻止した形だ。だが最大勢力の座が転がり込んできた左派連合(182議席)、改選前から大幅に議席を失った与党連合(168議席)、戦略投票で3番手に沈んだ国民連合(143議席)の獲得議席は、いずれも過半数(289議席)を大きく下回った。安定政権の樹立が困難な状況で、7月18日の新議会招集後も政権の枠組みが固まっていない。

◇拡大与野党連合

 議会の最大勢力となった左派連合は、政権発足に意欲をみせているが、左派が主導する政権が誕生する可能性は後退している。急ごしらえの左派連合は首相候補の一本化ができないまま今回の選挙戦に臨んだ。左派連合内で最多議席を持つのは、過去数回の大統領選挙でマクロン氏と対峙(たいじ)したメランション氏が率いる極左政党「不服従のフランス(LFI)」だ。同党は極右勢力と同様に反マクロンの急先鋒(せんぽう)で、マクロン大統領が主導した年金改革の撤回や欧州連合(EU)の財政規律の受け入れ拒否など、極端な政策を主張する。そのため、極左の政権参加を巡って、左派連合の内外から不安の声が浮上している。

 仮に極左が主導する左派政権が誕生したとしても、議会での内閣不信任に継続的にさらされ、政権存続が困難な状況にある。極左が加わる左派政権に対しては、中道勢力や右派勢力がそろって不信任を突き付ける可能性があるためだ。ただし、74議席を持つ極左を政権の枠組みから除外すれば、他党の協力が得られやすくなるが、それでは議会の最大勢力でなくなり、左派に政権を委ねる理由が消滅する。