港湾物流・企業・教育…「北東アジアのシンガポール」を夢見る釜山(2)

AI要約

シンガポールは起業を促進するための環境整備に注力し、世界的なベンチャー企業の都市として注目されている。

シンガポール政府は市民の意見を積極的に受け入れ、都市計画の透明性を高める取り組みを行っている。

教育分野でも先進的な取り組みを行うシンガポールでは、大学に行かなくても良質の仕事が得られる社会の構造がある。

港湾物流・企業・教育…「北東アジアのシンガポール」を夢見る釜山(2)

(1からつづく)

■起業の都市、シンガポール

 最近シンガポールが力を入れているのは「起業」だ。世界的な起業の都市として生まれ変わるため、各種制度的ハードルを下げている。ベンチャー企業に3年間税金を課せず、賃貸の免除、人件費の支援などと共に、マッチングファンド形式の資金まで支援している。「ドレイパー・スタートアップハウス」もこのような流れに支えられてシンガポールに作られた。ドレイパーの本社は米シリコンバレーにある。ドレイパー・スタートアップハウス・シンガポール本部代表のビクラム・バラティさん(39)は「各国のベンチャー企業10社が共に常駐し、共同プロジェクト事業を模索している。新生企業は事業の条件が良いところを探すしかないが、シンガポールは創業しやすい条件を備えている」と語った。グローバル起業コンサルティング会社の「スタートアップ・ブリンク」の2023年報告書はシンガポールスタートアップ環境が世界6位、アジア1位と評価する。韓国はアジアで4位だった。

 起業の都市は釜山市が夢見る未来でもある。ベンチャー企業をあまねく支援する釜山創業庁の設立、韓国産業銀行など7つの金融・政府機関が参加する2500億ウォン(約280億円)のベンチャーファンドを事業もその一環だ。再開発が進んでいる釜山港北港1埠頭の物流倉庫を367億ウォン(約41億5000万円)かけて改造し、革新起業タウンづくりを進めるのも同じ理由からだ。韓国産業銀行シンガポール支店の関係者は「シンガポールは規制が多いことで知られているが、実際経験する規制は多くない。釜山がグローバルな起業の都市になるためには、まず世界的なアンカー企業(様々な波及効果をクラスターにもたらし、 全体の発展に寄与する企業)を誘致しなければならない」と語った。

■住民に寄り添うシンガポール

 独立後、一度も政権交代を経験したことのないシンガポールだが、市民の意見を積極的に受け入れる取り組みを続けている。最も代表的な事例が都市計画だ。シンガポールは50年を目標に企画する都市開発の青写真をもとに10年長期計画を樹立するが、この過程で4段階の世論収集を行う。様々な年齢と背景を持つ市民が参加する公開世論調査とワークショップ、多様な集団討論、利害関係者たちとの対面会議を通じて決定した都市計画を公共場所で数カ月にわたり展示し、広く知らせる。

 開発過程で避けられない地域の不均衡と所得格差の解消にも積極的に取り組んでいる。特に注目されるのは不動産政策だ。市民と永住権者には1軒目の公共賃貸マンションを手放せば、2軒目のマンションを手に入れられる条件で、公共賃貸マンション2軒が99年にわたり提供される。シンガポール在住の韓国人、Sさんは「1%台の利子で保証金80%はローンを組み、残りの保証金20%は個人年金納入金で代替する。個人年金に加入しているなら、17~45坪の賃貸マンションに月10万ウォン(約1万1300円)程度で手に入れることができる」と語った。シンガポール都市再開発庁の関係者は「地域間の不均衡の問題を解決するため、都心に民間マンションに劣らない高級仕様の公共賃貸マンションを建てている。商業・住居地域を分散し、教育施設など住民が好む施設をあまり開発されていない地域に移す政策もともに進めている」と述べた。

■大学に行かなくてもいいシンガポール

 シンガポールは教育分野でも先進都市だ。国際学習到達度調査(PISA)と国際バカロレア(IB)教育課程のディプロマ成績が世界1位だ。教育を受けやすい都市を作るため、有名外国大学を誘致しようとする釜山としては、このようなシンガポールが羨望の対象だ。

 シンガポールの教育システムについては賛否両論が存在する。小学校の卒業試験で良い成績を収め、6年課程の名門中学校に入学さえすれば、シンガポール国立大学など世界的なレベルの大学に直行する構造だ。それだけに、子どもを名門小学校に通わせるための保護者たちの競争が激しい。ただし、韓国と大きな違いは、あえて大学に行かなくても、良質の仕事が得られるようにしようという社会的合意が存在するということだ。

 シンガポール政府も中学校の時から金融や貿易、観光などサービス産業中心のオーダーメード型の教育が行われるよう力を入れている。シンガポール国立大学のタン・ロンロン教授(日本学部)は「シンガポールと韓国はともに教育熱が高いという共通点があるが、シンガポール政府は多様な進路へとつながる教育機会を与えようと努力している」と語った。釜山市シンガポール研究チームを率いたソン・ヒヨプ釜山市政策首席補佐官は「国家経済が持続的に発展するためには首都圏と地方が共に発展しなければならない。東南圏の拠点であり大韓民国第2の都市である釜山が『北東アジアのシンガポール』になるためには特別法の早急な処理が切実だ」と話した。

シンガポール/キム・グァンス記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )