「韓国ドラマを観た罪」で中学生30人を公開処刑… 北朝鮮がここまでして「韓国との関係断絶」を進める理由は何なのか?

AI要約

北朝鮮が中学生30人余りを公開処刑した報道が韓国メディアで広まり、その理由が韓国ドラマを見たという理由だった。

北朝鮮では韓国文化の流入を禁止する法律があり、それに違反した場合は死刑や無期懲役といった厳しい処罰が行われる。

北朝鮮のプロパガンダと現実とのギャップが韓国メディアや風船活動を通じて伝えられ、当局の弾圧が厳しさを増している。

「韓国ドラマを観た罪」で中学生30人を公開処刑… 北朝鮮がここまでして「韓国との関係断絶」を進める理由は何なのか?

7月10日、韓国の「TV朝鮮」が、北朝鮮当局が中学生30人余りを公開処刑したことを報じた。「TV朝鮮」は保守系新聞「朝鮮日報」系列のケーブルテレビ局で、韓国政府当局の関係者からの情報としてこの話を伝えている。

TV朝鮮の報道を受けて、韓国内では多くのメディアが同ニュースを報じているが、日本の主流派メディアは全く伝えていないので、この事件を知らない人も多いだろう。

その後にTV朝鮮が韓国政府から抗議を受けたという話はないようなので、韓国政府もこれを事実だと認めていることになる。

では、公開処刑された中学生はどんな罪を犯したのだろうか。それはなんと、韓国から北朝鮮に飛ばされた風船にくっついていたUSBメモリを拾い、その中に納められていた韓国ドラマを見た、という話に過ぎない。

韓国にある脱北者団体が、北朝鮮政府のプロパガンダを信じないようにということで、風が北向きになる時期を見計らって数多くの風船を飛ばしているのだが、この風船を使って、韓国ドラマなどの動画を収めたUSBメモリを、どんどんと北朝鮮に送りつけているのだ。

ちなみに韓国の動画は、こうした風船によって運ばれるものばかりではなく、中国との国境を超えてやってくるケースもある。そのため中国語の字幕付きの動画もかなり出回っているようだ。

「韓国ドラマを見たというその程度のことで?」「中学生なのに?」と疑問に思うのは、日本人的な常識からすれば当然だろう。だが、北朝鮮では、それは絶対に許されない行為なのである。

北朝鮮は「北朝鮮こそが世界で最も幸せな国だ」というプロパガンダを行ってきたが、そんなプロパガンダが、韓国の映画やドラマを見れば、瞬時に大ウソだとバレてしまうからだ。

北朝鮮では2020年12月に、「反動思想文化排撃法」というものが制定されている。

同法27条は、「傀儡(つまりアメリカの強い影響力のもとにある韓国)の映画や録画物、編集物、図書、歌、絵、写真などを見たり聞いたり、保管した者、または傀儡の歌、絵、写真、図案などを流入、流布した者は、5年以上10年以下の労働教化刑(懲役刑)に処す」と定めている。

同法第37条の1には、「国家的に上映または発行、閲覧が中止された映画や録画物、編集物、書籍などを視聴、閲覧、保管した場合、1万ウォン~5万ウォン」の罰金を科すとの規定もある。

以上の条文を確認して、違和感を覚える人もいると思う。というのは、労働教化刑や罰金刑に処すという規定はあっても、死刑に処すという規定はないからだ。

いくら北朝鮮が法治国家ではないとしても、法の規定に反して、しかも未成年の中学生を死刑に処すとし、しかも公開処刑にするなどということがあるのかというのは、当然の疑問だろう。おそらくは同法第28条の規定を相当に拡大解釈しているのではないかと、私は考えている。

その第28条を見ると、「敵対国の映画、録画物、編集物、書籍を流入させたり、流布した者は、5年以下の労働教化刑に処す。大量の敵対国の映画や録画物、編集物、書籍を流入、流布したり、多くの人に流布した場合、または集団的に視聴、閲覧するように組織したり、助長した場合は、無期労働教化刑または死刑に処す」となっている。

この規定からすると、韓国文化を単に持ち込んだり、流布しただけでは大した罪にはならず、死刑になりうるのは、あくまでも大量に持ち込んだり、多くの人に流布するようなことを行ったり、集団的に視聴、閲覧するように組織した場合だけということになる。

つまり、「一緒に見ない?」と声をかけたり、それに応じて「見る見る!」と言って参加しただけでも、「集団的に視聴、閲覧するように組織した」というような拡大解釈を行っているのではないか。

なお、北朝鮮当局は先月にも、高校生に相当する年齢の青少年およそ30人に無期懲役や死刑を言い渡していたと伝えられている。