五輪標的に不安あおる偽動画、IOCの信用失墜が目的か

AI要約

ネットフリックスが製作した偽トム・クルーズ動画が五輪を批判し、IOCは偽情報キャンペーンとして非難した。

ロシアとベラルーシはパリ五輪で団体競技出場禁止となり、両国は反発している。

ロシア勢は五輪後に国際総合大会を開くことを宣言し、その目的はIOCの信用失墜だと分析されている。

 パリ五輪を翌年に控えた昨年初め頃、「五輪は堕落した」と題した9分ほどの動画がSNSに投稿された。「語り手」とされたのは、米俳優トム・クルーズさん。「国際オリンピック委員会(IOC)は何千年も続いた五輪をゆっくりと破壊している」と主張し、トーマス・バッハ会長らが「貢ぎ物集め」や「汚職の隠蔽(いんぺい)」をしていると批判した。

 米動画配信大手ネットフリックスのロゴが登場するが、同社製作のドキュメンタリーを装った偽動画だった。トム・クルーズさんの声はAI(人工知能)で生成されていた。

 IOCは同11月、動画は「組織的な偽情報キャンペーン」だとする声明を発表した。今年6月には、米CNNが西側当局者らの話として、ロシアの関与があったと報じた。

 ウクライナ侵略を続けるロシアと同盟国ベラルーシはパリ五輪の団体競技出場が禁じられた。個人競技の出場も「個人資格の中立選手」に限られ、両国は強く反発した。ロシアは五輪後に国際総合大会を開くと宣言していた。

 マイクロソフトは米IT企業の立場から6月に公表した報告書で、ロシアの目的はIOCの信用失墜だと分析した。「パリ五輪で暴力事件が起きる」といった恐怖を抱かせ、市民観戦の妨害を狙っているとの見方を示す。

 同社が「ストーム1679、1099」と呼ぶ二つのグループが昨年6月から五輪を標的とした活動を活発化させているという。フランスの放送局を装って「テロへの恐れからある試合でチケットの24%が払い戻された」などと偽のニュース動画を流し、不安をあおっていると指摘した。

 6月24日にネット上で配信された記事で、ネズミが五輪の開会式会場となるセーヌ川で泳いだりサーフィンをしたりするアニメ風の画像が紹介された。パリはネズミに悩まされた歴史があり、衛生状態への不安を皮肉ったとみられる。

 記事は美容関連のAIを開発する台湾系企業のフランス向けサイトに掲載された。同社は「記事は単純にアプリの宣伝用」と説明するが、サイトでは「あなたのユーモアを示そう」と生成AIの利用を促しており、結果的に中傷や偽情報の拡散に加担する恐れがある。