＜サッカー＞「自分を捨てた」という韓国代表監督選任の洪明甫、蔚山を離れた

「私は自分を捨てた。もう自分はない。（私の中には）大韓民国のサッカーしかない」。

洪明甫（ホン・ミョンボ）蔚山（ウルサン）ＨＤ監督（５５）の言葉だ。洪監督は１０日、蔚山文殊（ムンス）サッカー競技場で行われた光州（クァンジュ）ＦＣとのＫリーグ試合が終わった後の記者会見で、韓国代表の指揮官になる覚悟を明らかにした。この日は洪監督が代表チームの監督に選任された後、初めて公式的に姿を現す場だった。

大韓サッカー協会は７日、「洪明甫監督が代表チームの次期指揮官に内定した」と発表した。洪監督がＡ代表の指揮棒を握るのは１０年ぶりとなる。洪監督は２０１４年ブラジルワールドカップ（Ｗ杯）を控えて代表監督を引き受けたが、Ｗ杯本大会では２敗１分けで１次リーグ敗退となった。

洪明甫監督の代表チーム復帰の知らせは蔚山ファンには青天の霹靂のようだった。洪監督は先月３０日まで「私よりもっと経験豊富で経歴と成果が優れている方たちを（代表チームに）連れてくれば自然に私の名前は出てこなくなるはずだ。私の立場は常に同じであり、ファンは心配しなくてもよい」とし、代表監督に関心がないという趣旨で話した。ファンは洪監督が蔚山に残るという約束をしたものと受け止めた。結果的にこの日の記者会見は洪監督が蔚山ＨＤで参加した最後の公式行事となった。洪監督は１１日午前、蔚山選手団と別れのあいさつをした。２０２１年に就任してから３年半ぶりだ。当分はイ・ギョンス首席コーチが監督代行としてチームを率いる。

洪監督はこの日の記者会見で、この１週間で考えが変わった最初の理由について「李林生（イ・イムセン）サッカー協会技術総括理事が主導する韓国型サッカーモデル『ＭＩＫ（Ｍａｄｅ　Ｉｎ　Ｋｏｒｅａ）』が定着するのを支援しなければいけないという義務感のためだった」と明らかにした。

李林生技術理事は先月２０日、各級年齢別代表からＡ代表チームまで一つのサッカー哲学に合わせることを骨子とするＭＩＫプロジェクトを発表した。洪監督は「サッカー協会専務時代に年齢別代表チームとＡ代表チームを戦術的に一つの体系で結びつける作業の必要性を感じた。政策は現場にいる人たちが実行することが最も重要だ。Ａ代表の監督がこれを実行するべきだと考えた」と説明した。

また、代表監督を引き受けることになった２つ目の理由については「自分の中で何かが動き出した」と答えた。李林生技術理事に会った後、朝まで悩んだという洪監督は「１０年前のブラジルＷ杯当時の記憶が思い浮かんだ」と語った。

洪監督は「過去に失敗した過程とその後の（非難を浴びた）日々は本当にぞっとする。（ブラジルＷ杯失敗の記憶のために）挑戦するのが怖かった。答えを出せなかった」としながらも「結果的に自分の中の何かが動き始めた。『もう一度挑戦してみたい』という強い勝負欲が生じた。新チームを本当に新しくして、本当に強いチームで作って挑戦してみたいという思いになった」と伝えた。

洪監督は「１０年前は経験がかなり不足していて、サッカー指導者としてスタートする立場だった」とし「その間、Ｋリーグで多くの経験をした。指導者として良い時間を過ごした。まだ不足している点はあるが、多くの努力をする」と話した。その一方で「蔚山のファンには申し訳なく、話せる言葉がない」として頭を下げた。

洪明甫監督は代表監督選任過程の問題を指摘する映像を載せて物議をかもした元代表の朴柱昊（パク・チュホ）大韓サッカー協会戦力強化委員をかばう立場も見せた。朴柱昊委員は洪監督選任過程が手続きに基づいて進行されず、一部の戦力強化委員らが国内指導者を選任する方向に向かわせたという内容をユーチューブチャンネルで暴露した。すると大韓サッカー協会は「朴委員が秘密維持誓約を破った」とし、法的対応を検討することにした。

これに対し洪明甫監督は「（朴委員が）戦力強化委の中で困難があったためそのような話をしたはず。朴柱昊委員の言葉が不快に聞こえるかもしれないが、もうそれも包容してより良い韓国サッカーに向かっていくことが重要だ」と話した。洪監督はブラジルＷ杯当時、朴柱昊を指導した縁がある。