トランプ氏に「黒人から支持」の偽画像投稿…AI規制、米大統領選に間に合わない見通し

AI要約

トランプ前大統領の支持者が生成AIで作成した偽画像を使用し、黒人支持を狙う動きが広まっている。

大統領選を巡り、偽情報や偽画像がSNS上で拡散されており、影響力が懸念されている。

米政府やIT企業が偽情報対策に取り組んでいるものの、未だ十分な対応がなされていない。

 米国のトランプ前大統領は「非支持層」とされる黒人にも人気がある――。6月上旬、こう訴えかけてくるような画像がX(旧ツイッター)に投稿された。

 トランプ氏が黒人の若者らに囲まれた姿を捉えたとされる1枚だが、生成AI(人工知能)で作られたとみられる偽画像だった。支持者だという男性の投稿に対し、「トランプ氏は寛容だ」「偉大だ」と好意的な反応が相次いだ。投稿には黒人の支持を集める狙いがあったようだ。

 英BBCによると3月時点で、トランプ氏を支持する内容の偽画像がXなどで数十種類以上見つかり、一部は140万回以上閲覧された。背景として、前回の大統領選で黒人がバイデン大統領の勝利の鍵を握った点が指摘されている。米民間調査機関によると、前回選で黒人の9割程度がバイデン氏に投票していた。

 11月の米大統領選を巡っては昨年、共和党指名候補争いが続き、党や指名を争う各陣営が発信する偽情報が目立った。バイデン、トランプ両氏が再対決する見通しとなってからは抑制的になった一方、偽情報の発信源になっているのが一般市民だ。生成AIの普及により、迅速・大量に巧妙な偽動画や偽画像を作れるようになり、SNSに乗って拡散している。

 パレスチナ自治区ガザで戦闘が激化した1月には、軍服を着たバイデン氏が疲れ切った様子で軍関係者との会議に臨んでいるとされた偽画像がXに投稿された。高齢のバイデン氏を皮肉る内容だった。

 米政府はAI規制の法整備を急いでいるが、大統領選には間に合わない見通しだ。IT大手20社は2月、選挙妨害を防ぐため、偽画像などを検出する技術協定を結んだ。しかし、7月になっても一部のサイトでは「トランプ氏と黒人」の画像には「偽情報」などの注意書きはなく、SNS上で閲覧可能だった。

 米ブルッキングス研究所のエレーヌ・カマルク上級研究員は「選挙終盤でも接戦が続き、投票日の直前になって偽情報が流れた場合、真実かどうか見分ける時間はない。有権者の投票行動に大きな影響を与える危険性がある」と警鐘を鳴らす。