「火星滞在」実験施設から帰還 科学者ら4人 NASA

AI要約

米航空宇宙局の宇宙飛行士が火星滞在シミュレーションを行った実験施設から隔離され、4人が378日間過ごした後、新型コロナウイルス感染症下のロックダウンを経験した経験を共有しながら笑顔で姿を現した。

実験施設では野菜の栽培やマーズウォーク、通信の遅延など様々な状況下で過ごし、NASAの健康・パフォーマンス探査研究に参加したことを報告。

米国は2030年代に実現を目指す火星有人飛行の中継地点として、月面への再着陸を計画しており、NASAの研究は火星への人間の送り方に貢献している。

「火星滞在」実験施設から帰還 科学者ら4人 NASA

【AFP=時事】米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士が一見、何の変哲もないドアを3回強くノックし、明るい声で問い掛けた。「出て来る用意はできているか?」

 勢いよくドアを開けた飛行士の返事は聞き取れなかったが、ヘルメットの下でにっこり笑っているように見えた。歓声と拍手に包まれながら外へ飛び出したのは、アンカ・セラリウ(Anca Selariu)、ロス・ブロックウェル(Ross Brockwell)、ネイサン・ジョーンズ(Nathan Jones)、ケリー・ハストン(Kelly Haston)の4氏だ。

 彼らは過去378日間、米テキサス州ヒューストン(Houston)にあるジョンソン宇宙センター(Johnson Space Center)内に設置された実験施設「マーズ・デューン・アルファ(Mars Dune Alpha)」に隔離され、火星滞在シミュレーションを行ってきた。

 この施設の中で4人は野菜を栽培し、「マーズウオーク」をし、「地球」との通信の遅延や孤立・監禁状態など、NASAが「追加ストレス要因」と呼ぶ状況下で過ごしてきた。新型コロナウイルス感染症流行下のロックダウン(都市封鎖)を経験した人ならば、誰もが身震いしそうな経験だろう。

 だが今月6日、NASAの模擬実験「健康・パフォーマンス探査研究(CHAPEA)」の第1弾を終えて姿を現した4人は、笑顔を輝かせていた。チームリーダーで生物学者のハストン氏は「ハロー。皆さんにあいさつできるのは本当に素晴らしい」とにこやかに言った。

 救急医のジョーンズ氏は「皆さんの前で立ったまま、泣かないようにと思っている」と言ったが、数分後、群衆の中にいた妻を見つけると感極まっていた。

「マーズ・デューン・アルファ」は3Dプリンターを使って建造された160平方メートルの基地で、寝室、ジム、共用エリア、野菜を栽培するための垂直農場が備わっている。

 エアロックで仕切られた屋外エリアには赤い砂が敷き詰められ、「マーズウオーク」を行う際には宇宙服を着る必要がある。

 ジョンソン宇宙センターのスティーブ・カーナー(Steve Koerner)副所長は「彼らは1年以上にわたって、この居住施設で重要な科学実験を行ってきた。そのほとんどは栄養学に基づき、身体機能への影響を調査するものだ。われわれは人間を火星に送る準備をしている」とに語った。NASAでは計3回のCHAPEAを計画している。

 米国は2030年代に実現を目指す火星有人飛行の中継地点として、月面への再着陸を計画。「アルテミス(Artemis)」計画の下、月面で長期的に生活する方法などが研究されている。【翻訳編集】 AFPBB News