バイデン氏、乾坤一擲実らず 大敗で窮地、候補差し替え論も トランプ氏は冷静さ維持・米大統領選討論会〔深層探訪〕

AI要約

バイデン大統領がトランプ前大統領を破ることができず、資質が問われる状況に。

選挙戦でのバイデン氏の苦戦や不人気後継候補の問題に注目が集まる。

民主党が戦略を練り直し、バイデン氏を支持し続けるか、新たな候補を模索するかが焦点となる。

バイデン氏、乾坤一擲実らず 大敗で窮地、候補差し替え論も トランプ氏は冷静さ維持・米大統領選討論会〔深層探訪〕

 衰えを指摘されるバイデン米大統領(81)は、局面打開を目指し27日の大統領選テレビ討論会に臨んだ。しかし、ステージ上では覇気のなさが際立ち、刑事事件で有罪評決を受け、根拠のない主張を連発したトランプ前大統領(78)を破れなかった。乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負は「悲惨な結果」(政治専門紙ポリティコ)に終わり、バイデン氏の資質が問われる事態に。本選が4カ月後に迫る中、候補者差し替え論まで浮上した。

 ◇選挙戦継続に疑義

 「大惨事」「民主党はパニック状態」。討論会が終わると、米メディアにはバイデン氏のか細い声や疲れた様子、トランプ氏への反論の鈍さを酷評する見出しが躍った。

 因縁の再対決に臨んだこの日、バイデン氏の最重要課題は「2期目を務めるには高齢過ぎる」という国民の不安を払拭する力強いパフォーマンスを披露することだった。各種世論調査でトランプ氏の後塵(こうじん)を拝する結果が相次ぐ中、バイデン氏は必勝を期した。直前の1週間は、公務を離れてキャンプデービッド山荘にこもり、訓練に専念した。

 だが、CNNテレビの緊急世論調査の結果は、ダブルスコアの敗北。バイデン氏は記者団を前に「うそつきと討論するのは難しい」と肩を落とした。オバマ元大統領の選挙参謀を務めた民主党のアクセルロッド氏は「バイデン氏が選挙を継続できるかが話し合われるだろう」と述べ、候補差し替えの可能性を示唆した。

 ◇戦略練り直し

 同じ顔触れで行われた2020年大統領選の討論会は、現職だったトランプ氏の新型コロナウイルス対応をバイデン氏が責める立場だった。

 それから4年がたち、攻守は逆転。トランプ氏は、発言内容の支離滅裂さは変わらなかったものの、相手をちゃかしたり、短気を起こして発言を遮ったりすることなく、冷静さを保って論戦を終えた。陣営は「歴史的勝利だ」と誇った。

 CNNの調査では、討論会の結果、投票先を「変えた」と回答した人は5%。「考え直している」が14%、「変わらない」は81%だった。政治的分断の進んだ米国では有権者の選択が揺れ動く余地は小さいが、まれに見る接戦の今回、わずかな差も勝敗を左右し得る。

 トランプ氏にも先々の不安要素は多い。来月11日に不倫口止め料不正処理事件の量刑宣告を控えているほか、20年大統領選の敗北を覆そうとした事件の裁判が始まる可能性もある。

 民主党はバイデン氏に代わる旗印を見いだそうとしても、正当な後継候補となるはずのハリス副大統領(59)はバイデン氏以上に不人気だ。カリフォルニア州のニューサム知事(56)らの名前も取り沙汰されるが、決定打に欠く。

 候補者を正式指名する党全国大会は8月19~22日に開かれる。バイデン氏を押し立てて走り切るか、「新星」を模索するのか。民主党は戦略の練り直しを迫られることになった。(ワシントン時事)