「ベストの2人とは思えぬ」 無党派層は厳しい声 米大統領選討論会

AI要約

11月の米大統領選では「スイング・ボーター(投票先が揺れる有権者)」と呼ばれる無党派層や中道派の動向が重要。27日に行われた民主党のジョー・バイデン大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領の討論会には500人のスイング・ボーターが集まり、激しい論戦が展開。

討論会ではトランプ氏のひねりの効いた発言やバイデン氏の批判が飛び交い、会場は興奮した一方で失望の声も上がった。論戦の内容には賛否両論が存在し、有権者の意見は分かれた。

討論会を終えた多くの有権者が、バイデン氏もトランプ氏も理想的な指導者としては見えず、次回の選挙について戸惑いを覚えている様子がうかがえる。

「ベストの2人とは思えぬ」 無党派層は厳しい声 米大統領選討論会

 11月の米大統領選では「スイング・ボーター(投票先が揺れる有権者)」と呼ばれる無党派層や中道派の動向が勝敗を左右する。27日開かれた民主党のジョー・バイデン大統領(81)と共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の第1回テレビ討論会をスイング・ボーターたちはどう見たのか。

 中西部ウィスコンシン州ケノーシャの大学構内の礼拝堂に27日夜、全米各地から約500人の「スイング・ボーター」が集まった。超党派の対話を促す非営利団体「ブレーバー・エンゼルス」が、年次総会に合わせて討論の観覧会を開催。参加者は大型スクリーンに映し出された中継映像を見守った。

 最初に会場を沸かせたのはトランプ氏だった。「文末で何と言ったのか本当に分からない。彼自身も分かっていないんじゃないか」。直前に移民政策に関して、「全体の取り組み(total initiative)」と言おうとして「完全な禁止(total ban)」と言い間違えたバイデン氏をからかった。

 序盤はトランプ氏の方がインパクトがあり、CMで中断に入った時に感想を問われた参加者が「民主党員だが、トランプ氏の方が説得力があった。バイデン氏からトランプ氏に投票先を変えようと思った」と発言する場面もあった。ただ、論戦自体は低調で「ショーとして面白いだけだ」と不満の声も上がった。

 後半には泥仕合が激しさを増した。バイデン氏が「妻が妊娠中にポルノ女優のスターとセックスしたりして、いったい何十億ドルの民事賠償を負っているのだ」と批判すると、トランプ氏が「ポルノ女優のスターとはセックスしていない」と否定。観覧会場は失笑に包まれた。

 約90分間に及んだ討論を聞き終えた有権者の多くは「失望感」を漏らした。西部ユタ州の市場調査会社経営、モウリー・ジャイルズさん(53)は「(米国民)3億人以上の中でベストの2人だとは思えない。バイデン氏は高齢で言動が弱々しく、トランプ氏はただのパフォーマーだ」と批判。「民主主義を破壊するトランプ氏には投票しないが、バイデン氏にも投票したくない」と語った。

 西部オレゴン州の無職、キム・スタニックさん(63)は「未来に何をするという話が全くなかった。過去の話、それも誇張ばかりで、ひどい討論会だった。4年前は『トランプ氏に反対』という意味でバイデン氏に投票したが、今回は分からない」と吐露。東部コネティカット州の無職、ゲリー・ホランドさん(73)は「誰かの気持ちを変えるような討論会ではなかった。進行役が候補者にきちんと質問に答えさせるべきだった」と指摘した。【ケノーシャ秋山信一】