安手なミーム・コンテンツの大量に消費すると脳はどうなる?「ブレインロット(脳の腐敗)」は本当に起きているのか?

AI要約

「ブレインロット(brainrot:脳の腐敗)」とは、ミーム文化における俗語で、簡単に消費できるコンテンツに過剰に時間を費やすことで引き起こされる影響を指す。この用語の意味や普及について紹介。

「ブレインロット」に苦しむ人々の特徴やその影響について、複数の見解を紹介。現実世界への影響や、治療が必要と考えられる事例についても触れられている。

ネット依存やスクリーン依存に関する議論から、テクノロジーの健全な利用に向けたアプローチを提唱する声や、専門家の見解を取り上げた内容。

安手なミーム・コンテンツの大量に消費すると脳はどうなる?「ブレインロット(脳の腐敗)」は本当に起きているのか?

ソーシャルメディア上で過去2ヵ月ほどの間に急増しているフレーズに「ブレインロット(brainrot:脳の腐敗)」というものがある。

これはミーム文化の定番である「簡単に消費できる安手のコンテンツ」に多大な時間を費やすことによって引き起こされる影響を指す俗語で、米紙「ニューヨーク・タイムズ」によれば、その症状には「日々の会話や自身の投稿のなかに、ミームから生まれたネタや俗語ばかりが出てくる」などがある。

そういった人々に「あなたはブレインロットだね(脳が腐ってるね)」とコメントすることは、褒め言葉ではない。

だが、一部の人々は、「ニッチなネット雑学をどれだけ知っているか」という意味で、自身のブレインロット状態を認めることに小さな誇りを持っていたりもするようだ。

実際、名作映画やテレビ番組のセリフを、最新のネットスラングで吹き替えする動画や、ブレインロットしたキャラクターを演じる動画は人気を博しており「ブレインロット・コンテンツ」という、一つのジャンルになるまでに成長している。

「ブレインロット(脳の腐敗)」は、その人が長い時間をオンラインで過ごしていることを間接的に意味しているが、医学的または科学的な用語ではない。よって、その解釈もさまざまであるようだ。

米紙「ワシントン・ポスト」のコラムニストであるテイラー・ロレンツは、この「脳の腐敗」は「壊れた脳(broken brain)」と同義だとの考えを示している。どちらの用語も、ネット上であまりにも長い時間を過ごしたことでそこで目にするものによって思考が歪んでしまった状態を指し、それにより「現実世界での生活にも悪影響が出ている人たちに適用される」と述べている。

また、米メンタルヘルス入院治療センターの「ニューポート研究所」は最近、「脳の腐敗」に苦しむ人々の募集を開始しており、ウェブサイト上では、ネットおよびスクリーン依存症の子供を持つ親に対し、全米のいずれかの拠点で治療を検討するよう勧めている。

一方、ボストン小児病院の小児科医マイケル・リッチは、「脳の腐敗」はネット依存症というよりも、「ほかの基礎疾患を抱えている人々が自分自身を麻痺させるための対処メカニズムである」との見解を同紙に述べている。

そういった人々のなかには、何も考えずに長時間画面をスクロールしたり、ゲームをしたりすることで、自分を落ち着かせているケースもあるという。

リッチの目標は、ネットとスマホに関する議論を「(ネットが)良いか悪いか」ではなく、その人のオンライン習慣が「健全か不健全か」へと再構成することで、テクノロジーを悪者にするのではなく、それが健康的な習慣であるか否かに焦点を当て、その使用に対するバランスの取れたアプローチを提唱している。