韓国がウクライナに武器支援を検討、露朝条約に対抗…「深刻な懸念を示し糾弾する」

AI要約

韓国政府は、ロシアと北朝鮮の「包括的戦略パートナーシップ条約」に警戒感を示し、ウクライナへの武器支援を検討。

尹政権は米韓、日米韓の安全保障協力を強化し、北朝鮮との関係に慎重な姿勢。

南北関係が緊張し、北朝鮮が南北軍事合意破棄を宣言、韓国も効力停止を決定。

 【ソウル=依田和彩】韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、ロシアと北朝鮮が19日に締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」に強い警戒感を示している。ロシアとの軍事協力を強化した北朝鮮が、挑発行為をエスカレートさせかねないためだ。尹政権は対抗措置として、ロシアの侵略を受けるウクライナへの武器支援を検討し始めた。

 韓国大統領府は20日午後、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、対応を協議した。張虎鎮(チャンホジン)国家安保室長は終了後に声明を発表し、条約締結について「深刻な懸念を示し、これを糾弾する」と述べた。

 北朝鮮の韓国侵攻で始まった朝鮮戦争(1950~53年)とロシアのウクライナ侵略を挙げ、「先に侵略戦争を起こしたことがある国が、ありえない先制攻撃を想定して軍事協力を約束することは、理屈に合わない」と非難した。米韓、日米韓の安全保障協力を更に強化する方針を示した。

 張氏は「ロシアが北朝鮮を支援し、韓国の安全保障に危害を加えることは、韓露関係に否定的な影響を及ぼさざるを得ない」と警告。ウクライナへの武器支援のあり方を「再検討する」と述べた。

 尹政権は自由や民主主義を重視する価値外交を掲げ、ウクライナとの連帯を表明。防弾チョッキなどを提供してきたが、殺傷能力のある武器は供与しない方針で一貫してきた。北朝鮮への影響力を持つロシアを刺激しすぎないための「配慮」だった。ウクライナへの武器提供に乗り出せば、大きな方針転換となる。

 韓国政府は20日、露朝間で武器や石油の輸送などに関与した船舶や機関、個人を独自制裁の対象に指定することや、ウクライナ侵略を受けた対露輸出規制の対象品目を拡大することも決定した。

 南北関係は緊張が高まりつつある。北朝鮮は昨年11月、南北の偶発的な衝突防止を目的に2018年9月に締結された「南北軍事合意」の事実上の破棄を一方的に宣言した。韓国側も今月、合意の効力を全面的に停止することを決めた。