【舛添直言】「解散総選挙」の大勝負に出たマクロン、それでも極右の勢いはとまらない

AI要約

EUの欧州議会選挙で右派や極右が議席を獲得し、中道勢力と環境政党が苦戦している。

ウクライナ戦争の影響や移民問題、気候変動への懸念が極右ポピュリスト勢力の台頭を支えている。

ドイツ、オーストリア、イタリアなどで極右の躍進が顕著であり、各国の政治状況が変化している。

 (舛添 要一:国際政治学者)

 6月6日~9日、EU(欧州連合)の立法機関である欧州議会の選挙が行われた。720の議席を比例代表制で争うもので、5年に1度行われる。議席は、人口に応じて配分され、ドイツが最大で96議席で、ルクセンブルクやマルタは最小の6議席である。

■ 右派と極右が伸長

 選挙の結果、右派や極右が過去最多の議席を獲得した。

 第一党は、ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)などが加盟する中道右派の「欧州人民党(EPP)」で186(+10)議席、第二党が、ドイツの社会民主党などがメンバーの中道左派「欧州社会民主進歩同盟(S&D)」で135(-4)議席、第三党が、フランスの「再生(RE)」などが入る中道リベラルの「欧州刷新(RE)」で79(-23)議席となっている。

 これに対して、右派は、フランスの国民連合(RN)やオランダの自由党(PVV)などが属する「アイデンティティーと民主主義(ID)」が58(+9)議席、イタリアの「イタリアの同胞(FdI)」などが加盟する「欧州保守改革(ECR)」が73(+4)議席である。

 左派は、緑の党・欧州自由連盟が53(-19)議席、欧州統一左派連合・北方緑の左派が36(-1)議席と、議席が減った。

 中道勢力は3派合計で400議席を獲得し、過半数を維持した。右派勢力の伸張が目立つのに対して、環境政党は大きく勢力を減退させた。

 何がこのような結果をもたらしたのであろうか。

 まずはウクライナ戦争の影響である。物価は上昇し、人々の生活は苦しくなった。それだけに、ウクライナのことよりも自国が大事だという意識が高まっている。

 また、治安の悪化など、移民に対する不満も高じており、過剰な気候変動対策が自分たちの生活を脅かすという思いを強めている。

 このような国民の不安に応えるべく、極右ポピュリスト勢力は、移民、環境保護、EV推進、LGBTに反対し、ウクライナ支援にも消極的である。そして、EUそのものに対して批判的で、EUの課す規制に反対している。欧州各国で農民がトラクターで道路を閉鎖するなどの抗議活動を行ったことは記憶に新しい。

■ ドイツ・オーストリア・イタリアでの「極右躍進」が意味するもの

 欧州議会の選挙結果は加盟各国によって異なるが、統合欧州の屋台骨であるドイツとフランスにおいて、極右の伸びが著しく、衝撃が広まっている。

 ドイツでは、ドイツでは移民排斥をうたう「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢力を伸ばし、昨年12月には東部ザクセン州のピルナ市長選でAfDの候補者が当選している。今回の欧州議会選挙では、野党で保守のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が29議席、AfDが15(+6)議席、ショルツ政権与党のSPD(社会民主党)が14(+2)議席、緑の党が12(-9)議席という結果となった。AfDが票を伸ばし、環境保護をうたう緑の党が大きく票を失った。

 オーストリアでも、極右が第一党となった。

 イタリアでは、ネオファシストのメローニ首相が率いる「イタリアの同胞」がイタリアで最多の28.8%を獲得した。