「お母さん、これ、恐竜のタマゴじゃないの!?」約6600万年前の化石を大発見した少年(9)…驚きの眼力の背景にある“納得の理由”とは

AI要約

中国恐竜研究が革新的な発見を続ける中、広東省で恐竜のタマゴ化石が発見される。これは深圳市内で初めての恐竜の化石であり、新たな種であるとみられる。

化石は恐竜絶滅時代から数メートル下の地層から見つかり、恐竜が孵化できなかったために化石化したものである。今後は深圳の博物館で展示される予定だ。

中国恐竜研究の進歩とともに、盗掘や政治関与などの問題も浮上している。深圳市は若い人口を持つ都市であり、歴史的遺物は少ないが、恐竜の化石が見つかるなど意外な発見がある。

「お母さん、これ、恐竜のタマゴじゃないの!?」約6600万年前の化石を大発見した少年(9)…驚きの眼力の背景にある“納得の理由”とは

 恐竜研究の分野で革新的な発見が相次ぐ中国。いまや恐竜種の発見数もアメリカを抜いて世界一となっている。一方で、盗掘・密売や政治関与といった諸問題も少なくない。中国恐竜界の知られざる実情とは。

 ここではノンフィクションライターの安田峰俊氏が執筆、古生物学者の田中康平氏が監修を行った『 恐竜大陸 中国 』(角川新書)の一部を抜粋。中国経済の中心地、広東省で発見された化石にまつわるエピソードを紹介する。(全2回の1回目/ 続き を読む)

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 近年、中国発のサイバーイノベーションが有名になり日本でも注目されるようになった広東省の大都市・深圳は、市内常住人口の平均年齢が32歳程度という非常に若い街だ。深圳はもともと、香港に隣接していた田舎の漁村だったが、1979年に改革開放政策が施行されたことで急速な発展を遂げたのである。

 そんな都市だけに、深圳は中国の街としては逆に珍しいほど、歴史的な遺物がすくない。市内西部の南山区にある南宋の最後の皇帝の墓「宋少帝陵」(ただし作られたのは1911年)と、市内北部の龍崗区に客家(独自の文化を持つ漢民族内部の方言グループ)の古民家が保存されていることくらいである。

 ところが、そんな歴史なき都市・深圳で、もっと古いものが見つかった。

 2013年7月19日、夏の強烈なスコールによって市の西部の坪山区で地すべりが発生。区の地質調査員が被害状況の確認に現地に向かったところ、土砂のなかに不思議な丸い部分を持つ岩盤を複数発見したのである。

 発見者が地質の専門家たちだったことで、これが化石であることはすぐに見当がついた。

 調査員は市の土地計画開発委員会坪山管理局に電話で報告して岩盤を持ち帰り、あらためて何度か専門家の鑑定を受ける。結果、やはり、恐竜のタマゴの化石(が含まれた岩盤、以下同じ)であった。

 2015年9月に中山大学と中国科学院の合同研究チームが発表したところでは、この化石はピンナトウーリトゥス(Pinnatoolithus)の新卵種とみられ、恐竜が絶滅したK-Pg境界(中世代の白亜紀末期と新世代との境界)からわずか数メートル下の地層に眠っていたという。恐竜の時代が黄昏をむかえつつある時期に、運悪く孵化できなかったタマゴが化石化したわけだ。なお「ピンナトウーリトゥス」とは、タマゴの殻に付けられた卵属名である。

 これは深圳の行政区画内ではじめて見つかった恐竜の化石だった。

 現在、このタマゴ化石は市内東部の深圳大鵬半島国家地質公園博物館に収蔵されており、「今後は実物の展覧や動画のかたちで参観できるようにする」(『化石網』2018年9月5日付け報道)そうだ。