バイデン氏、苦肉の移民制限 争点化回避も左右から批判 米大統領選

AI要約

バイデン米大統領が不法越境者の急増を受け、メキシコ経由の難民希望者の受け入れを制限する大統領令を発令した。移民に比較的寛容だった従来政策から転換したこの措置は、左右の両派から批判を受けている。

新たな措置は、越境者数が一定以上に達した場合に難民申請の受け付けを一時停止し、国外退去とする内容。移民擁護派への配慮も示されているが、左派からは非難が相次いでいる。

バイデン政権はトランプ政権の排外的な移民政策を改め、しかし不法越境者の流入が続き、政治的な攻防が激化している。

 【ワシントン時事】バイデン米大統領が4日、不法越境者の急増を受け、メキシコ経由の難民希望者の受け入れを制限する大統領令を発令した。

 移民に比較的寛容だった従来政策からの転換は、トランプ前大統領と対決する11月の大統領選での争点化回避を狙った苦肉の策。だが、さらなる対策を求める右派、移民を擁護する左派の双方から批判が上がり、劣勢挽回につながるかは不透明だ。

 新たな措置は、正規の書類を持たない越境者数が1日平均2500人を超えた場合に難民申請の受け付けを一時停止し、以降は国外退去とする内容。保護者を伴わない子どもや人身売買の被害者は例外とするなど、移民擁護派への配慮も示した。バイデン氏は4日の演説で「厳し過ぎると言う人もいるが、我慢してほしい。何もしないという選択肢はない」と理解を求めた。

 しかし、民主党急進左派を代表するジャヤパル下院議員は、声明で「極めて嘆かわしい」とバイデン氏を公然と非難。「重罪犯トランプが採った移民政策と同じ法条項を適用した」となじった。

 一方、大統領選で返り咲きを果たせば「就任初日に国境を封鎖する」と公言するトランプ氏は、SNSでバイデン氏の措置を「うわべだけの対策だ」と批判。共和党のジョンソン下院議長も声明で「政治的策略にすぎない」とこき下ろした。

 バイデン氏は2021年の就任早々、トランプ政権の排外的な移民政策をより寛容な内容に切り替えた。その後、国境管理当局の処理能力を上回る数の不法越境者が流入し、23年度は過去最多の約250万人を記録。世論調査では、移民対策がインフレを含む経済政策と並ぶ重要争点に浮上し、バイデン政権にとってアキレス腱(けん)と化した。

 米メディアは、今回の対策について「遅きに失した。バイデン氏が党内の急進左派との対立を避けてきたからだ」(USAトゥデー紙)などと厳しく論評している。