<14億の選択>モディ首相は「トップダウン困難に」 識者に聞くインド総選挙

AI要約

モディ首相率いる与党BJPが単独過半数を割る結果となったインド総選挙。経済の影響、若者の不満、野党連合の協力が要因とされる。

モディ政権の3期目はトップダウンの意思決定が難しくなるかもしれず、選挙結果により求心力が弱まる見通し。

公平性の疑問がある中、選挙結果は有権者や与野党によって受け入れられており、民主主義の基本が守られたと評されている。

<14億の選択>モディ首相は「トップダウン困難に」 識者に聞くインド総選挙

 インド下院の総選挙は5日、モディ首相のインド人民党(BJP)を中心とする与党連合の勝利が確定したが、BJP単独では過半数を割り込んだ。今回の結果が与える影響について、インドの政治に詳しい中京大の溜和敏教授に聞いた。【聞き手・松本紫帆】

 今回のインド総選挙では、モディ氏のBJPが単独過半数を割り込むという結果となり、予想以上に議席を減らした印象だ。

 BJPの苦戦には、経済的な事情が大きく影響しているのではないかと考える。インド社会全体が経済発展しているという流れの中で、恩恵を受けられない人も多く、若者の失業率も高いままだ。人々の不満が政権に向いた可能性がある。また、最大野党の国民会議派を中心とした野党連合の協力がうまくいった点も大きいだろう。

 モディ政権が3期目に突入した場合、これまでのようにモディ氏を筆頭とした少数の指導者によるトップダウンの意思決定は難しくなるだろう。モディ氏の権力の源泉は国民からの人気と選挙が強いという点だったが、選挙が終わった今、根本的に揺らいでおり、求心力も弱まるだろう。

 総選挙を巡っては、主に野党側から公平性を疑問視する声が上がっていた。ただ開票作業が終わっても「不正な選挙だ」と騒ぎ立てる声は聞こえず、有権者や与野党はこの結果を受け入れていると感じる。

 インドの民主主義を危ぶむ声もあるが、少なくともこの選挙では与党が大きく議席を減らす結果となったことで、民主主義の基本は守られていることが証明されたと言えるのではないか。