【西武】5月にして今季2度目の7連敗 重いムードを変えうる選手が毎朝毎夕室内練習場で黙々と

AI要約

西武は厳しい状況にあり、課題の打撃改善が急務である。

控え捕手の是沢は真摯な姿勢で猛練習し、チームの雰囲気を明るく保つ存在である。

是沢はプロ野球選手として見初められたのは、数字以上の要素が大きく、猛練習を続けている。

【西武】5月にして今季2度目の7連敗 重いムードを変えうる選手が毎朝毎夕室内練習場で黙々と

<ロッテ2-1西武>◇22日◇ベルーナドーム

 既に自力優勝の可能性が消滅している西武が、今季2度目の7連敗を喫した。5月にして13勝29敗の借金16。苦境が続く。

 この日も4安打。課題が打にあることは明確で、打者の新戦力1人の補強で劇的に改善できる状況ではない。

 今の西武に限らず、この状況でチームの雰囲気が良いはずはない。せめてその部分だけでも打開策はないのだろうか。

 前日21日、午後6時15分。ベルーナドームに隣接する室内練習場。初回から5失点した様子をタブレットでじっと見ている選手がいた。背番号122の是沢(これさわ)涼輔捕手(24)だ。

 「よしっ…」と立ち上がりマシン打撃を始めた。珍しいことではない。寮生の是沢は朝も夕方もピッチングマシンと向き合う。21日は午後の指名練習後、ウエートルームで鍛え、またピッチングマシンの前にやって来た。1軍の試合開始が始まった後も打っていたのは是沢だけだった。

 健大高崎(群馬)でも法大でも、控え捕手だった。主に強肩と練習に真摯(しんし)な姿勢を見初められ、プロ野球に飛び込んだ。

 2年目の今季、イースタン・リーグで11試合に出場し盗塁阻止率は4割前後。「延長戦での三振ゲッツーもやっているので、いいところでは刺せていますね」と話す。羽田慎之介投手(20)菅井信也投手(20)青山美夏人投手(23)らとバッテリーを組むことが多く、ディフェンス面は評価されている。

 課題の打撃はここまで打率2割前後をさまようが、スイングは強くなり確実に上達した。「でも1軍の方々が2軍で調整登板するともう、手のひらで転がされますね…。この前も鈴木健矢さんに。去年はバウアーに」。少なくとも今の1軍打線の救世主にはなりえない。

 ただ、是沢には大きな個性がある。控え選手がプロになれたのには訳がある。入団時、担当の竹下潤スカウトが言った。

 「野球に対する姿勢ですね。いつ(練習を見に)来てもグラウンドでバットを振っている。捕手はいろんな投手の球を捕る。一番大事なものを持っています」

 今春センバツで初優勝した健大高崎の青柳博文監督(51)も「あんな練習する子、なかなかいません。不器用なところもあるけれど」と回想する。加えて「1浪すれば東大も狙えた」と言われるほどの頭脳明晰(めいせき)な面も当時からあった。

 そして学生時代も今も、大声×ガムシャラさ×いじられキャラで、ベンチの空気を変えられる存在だ。

 今の西武が底抜けに明るいはずがない。どのチームも負ければ焦る。沈む。是沢も野球人生で何度もそんな様子を見てきた。ベンチにいる時間が長かったからこそ、やってきたこと。

 「そういう時に暗くなるのは当たり前なので、そこでカラ元気でも声出せるようにしてきました。相手のこととか、マイナスなことは言わないように。マイナスなこと言うと、勝手にマイナスな部分が自分やチームの中で働いちゃうので。僕も打席で空振りしても『大丈夫、大丈夫』って声かけてくれるだけで前向きになれますし」

 22日現在、支配下選手の枠は6人分、空いている。最優先の補強ポイントは「打てる選手」ながら、育成選手では3年目左腕の菅井信也投手(20)が奪三振を重ねてアピールを続け、支配下への可能性を高めている。

 ただ、いろいろな役割が集まってこそのチームでもある。王道じゃないアプローチ、他と明らかに違うピースがいてもいい。

 首脳陣が「ベスト」と判断する布陣でもこれだけ勝てていない、厳しい現状だってある。

 是沢は入団会見で「火縄銃」「北極星」とキャッチーなフレーズを言い、中村や源田に1発で存在を覚えられたムードメーカーだ。野球への貪欲な姿勢に、大ベテランの栗山は「こんなルーキー、本当に初めてですよ」と驚いた。数字を残してこそのプロ野球だが、そもそも是沢がプロ野球選手として見初められたのは「数字以外」のウエートが他の選手より大きい。

 1軍が試合をやっていようとなかろうと、是沢はいつも、日が暮れてからも1人で黙々と快音を響かせている。たとえ誰も見ていなくても。【金子真仁】