【相撲編集部が選ぶ夏場所9日目の一番】あっぱれ! 平戸海が大の里を倒す。1敗消えて優勝争いは風雲急

AI要約

大の里が平戸海に敗れ、優勝争いが盛り上がっている。大の里は負け込み、琴櫻との争いが激化している。

場所の展開や戦い方により、優勝プレッシャーと予想が一変している。

残り6日間の戦いが非常に重要で、決勝戦が注目される展開となっている。

【相撲編集部が選ぶ夏場所9日目の一番】あっぱれ! 平戸海が大の里を倒す。1敗消えて優勝争いは風雲急

平戸海(押し出し)大の里

こんな勝ち方があったか!

 

優勝候補最有力の大の里が2敗目を喫した。倒したのは平戸海だ。

 

平戸海は、今場所自己最高位の前頭2枚目に番付を上げてきた、大の里と同い年の若手力士。小柄ながら真っ向勝負の相撲が潔く、このところの進境も著しい力士だ。

しかし……、対大の里戦ということになると、失礼ながら戦前は勝てるイメージは、ほぼ浮かばなかった、というのが正直なところだ。平戸海は大の里とは右の相四つで、左前ミツを取りにいく相撲。となると、大の里にとっても得意の右が入りやすい相手、ということになる。「小柄ながら真っ向勝負」が災いし、平戸海は大の里に右差し手から起こされてしまうのではないか――。という予想が成り立つことは簡単だ。先場所の初対戦ではモロ差しになりながらもパワーで寄り切られており、勝利への道は遠いかと思われた。

 

しかし、勝負というものはやってみなければ分からない。この日、平戸海は素早く、低い100点満点の立ち合いで、すぐに左の前ミツに手を掛けた。大の里は当然これを切って振り払うが、平戸海に左ヒジを締められて効かなくなったため、浅く差した右を抜き、右手で押さえるような叩き。ここでまず、「立ち合いの馬力」という大の里の有利な要素が一つ無力化された。大の里はその後、右を差しにいくが、平戸海は今度は廻しにこだわらず、左からおっつけて大の里の右差しを許さず。これで「右差し手からの力強い起こし」という、二つ目の大の里有利の要素も無力化。平戸海はそのまま出て一気に大の里を押し出した。

「ダメっすね。またあした、切り替えて頑張ります」と大の里。そのあとは「立ち合いから相手のペース?」「立ち合いの踏み込みは?」「平戸海は巡業で稽古した時と印象が違った?」と聞かれても「そうなんじゃないですか」「分からないです」「どうなんですかね」と、もはや最低限の答えしか出せない状態となってしまった。

 

この日は大の里と1敗で並んでいた宝富士も敗れ、1敗力士が消滅。琴櫻、大の里、御嶽海、湘南乃海、宝富士の5人が2敗で並ぶ形となり、優勝争いはにわかに風雲急を告げてきた。

 

地力からすると、やはり役力士の琴櫻と大の里の争いに収れんしていくとみるが、すでに直接対決が終わっており、この日星が並んだことで、まったく互角の戦いになったとみていいのではないか。

 

普通の場所なら、後半戦の大関と小結の対戦相手の比較では、大関は難敵を多く残し、小結は前半で難敵を消化している、ということになるはずだが、三役が多く休場している今場所は、その公式が当てはまらない。三役で豊昇龍戦と阿炎戦を残す、という条件は2人とも同じで、平幕との対戦も、ほぼ同様に消化しており、ここで大きな差はない、と言っていい。

 

今場所の全体的な相撲内容では、やや大の里のほうがいい気もするが、これまでの経験値ではやはり琴櫻が上回るはず。そう考えると、総合的にはどちらが優位とも言い難いような気がする。

 

このまま相星で最後まで行って、優勝決定戦、ということになれば、最も盛り上がり、かつすっきりした決着となるが、さてどうなるか。とにかくあと6日間、2人にとっては負けられない、シビレる戦いが続くことになりそうだ。

文=藤本泰祐