ライバルに先を越され続けた5年間。スーパーフォーミュラ初優勝の牧野任祐が明かす苦悩「言い訳できない環境で勝てず、もどかしかった」

AI要約

スーパーフォーミュラ第2戦オートポリスの決勝レースで、悲願の初優勝を果たした牧野任祐の感動を表現。

長い道のりやチームメイトの活躍による精神的苦悩、エンジニアとの関係性など、牧野の苦悩と成長の過程を振り返る。

初優勝を収めた喜びと次なる目標に向かう牧野の決意を伝える。

ライバルに先を越され続けた5年間。スーパーフォーミュラ初優勝の牧野任祐が明かす苦悩「言い訳できない環境で勝てず、もどかしかった」

「もう俺勝てないと思った、SF……アレックスが勝って都史樹が勝って、仁嶺も勝って、格之進も勝ってみんな勝って……もう俺絶対勝てないと思ってた!!」

 スーパーフォーミュラ第2戦オートポリスの決勝レース。チーム無線に涙声で絶叫し、思いを爆発させたのは、悲願の初優勝を成し遂げた牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。

 牧野の初優勝までの道のりが、これほど長く険しいものになると予想した者はいただろうか。

 牧野はヨーロッパのF3、F2で戦った経験を経て、2019年にNAKAJIMA RACINGからスーパーフォーミュラにデビューすると、デビュー戦でいきなりポールポジションを獲得して周囲を驚かせた。その後2021年に現在所属するDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに移籍すると、上位入賞や表彰台の常連となり、2022年はランキング5位、2023年はランキング6位となったが、優勝だけには手が届いていなかった。

 そんな中で牧野のメンタルに追い討ちをかけたのが、チームメイトの活躍だった。デビュー年のチームメイトだったアレックス・パロウは、ポールポジションこそ牧野が先に獲得したが、その後はパロウが初優勝を記録してタイトル争いにも加わった。2020年にチームメイトになった大湯都史樹も、ルーキーながら鈴鹿戦で初優勝をかっさらっていった。

 ダンディライアン移籍1年目の2021年は福住仁嶺がチームメイトだったが、福住はSUGOで初優勝、鈴鹿で2勝目を挙げてランキング2位に。2023年にはルーキーの太田格之進が新たな相方となったが、シーズン後半のチーム復調の流れに乗り、勝利を掴んだのは牧野ではなく太田の方だった。牧野も富士戦で優勝争いを演じたが、リアム・ローソンに一歩及ばず2位に終わった。

 こういった過去5シーズンの経験は、当然牧野を精神的にも苦しめていた。その苦悩が、冒頭の無線にも表れている。

 優勝という点でチームメイトに先を越され続けたことは、「自分だけなぜ勝てないんだ」というもどかしさに繋がったのか、それともドライバーとしての自信を損なうものだったのかと問うと、牧野は両方だと答えた。中でも昨年太田に敗れた昨シーズンが精神的に最も辛かったという。

 牧野の担当エンジニアは、2020年に山本尚貴とチャンピオンを獲得し、2021年は福住とランキング2位を獲得した杉崎公俊。そういった「言い訳のできない環境」も、もどかしさに繋がっていたようだが、そんな中でも自身を支えてくれた杉崎エンジニアにも感謝の言葉を述べた。

「杉さんは尚貴さんとチャンピオンをとっていて、仁嶺が乗った時も2勝してランキング2位でしたが、その後に僕が乗って成績は出ませんでした。環境的には正直言い訳できない環境だったし、その中で僕が優勝できなくてもどかしい状況が続いていましたが、杉さんには本当にずっと支えてもらいました。今回のストラテジーも完璧だったと思いますし、本当に感謝しても感謝しきれません」

 初優勝を記録し、ホッとしたという気持ちが正直なところだと語る牧野。しかし次なる目標に向けて、前を向かなければならない。今回の勝利でポイントリーダーの野尻智紀(TEAM MUGEN)と同点になっているのだ。牧野は次のように語る。

「次のレースではチャンピオンに向けて切り替えてやらないといけないと思います。喜ぶだけ喜んで、また次のレースに向けてはしっかり切り替えて準備して、いつも通り臨みたいです」