なぜ大谷翔平はこんなに走れるのか!? “進化のキーマン”マッカロー一塁コーチが明かした理由 『1・3秒』にこだわり『ビデオ』で徹底研究

AI要約

大谷翔平選手が歴史的な偉業を達成し、1試合で3本塁打を含む6安打を放ち、50本塁打・50盗塁を達成した

大谷選手は相手投手の映像を熟密に分析し、走れるかどうかを決定する際に重要な役割を果たしている

大谷選手と一塁コーチの関係が大谷選手の盗塁スキルの進化に貢献し、成功率は92.7%に達している

なぜ大谷翔平はこんなに走れるのか!?  “進化のキーマン”マッカロー一塁コーチが明かした理由 『1・3秒』にこだわり『ビデオ』で徹底研究

◇番記者が見た

◇19日(日本時間20日) マーリンズ4―20ドジャース(マイアミ)

 ドジャースの大谷翔平選手(30)が「1番・指名打者」で出場し、3打席連続本塁打を含む6打数6安打3本塁打、10打点、2盗塁で前人未到の「50本塁打、50盗塁」を達成し、51本塁打、51盗塁とした。1試合3本塁打、6安打、10打点はいずれもメジャー自己最多。また、チームは12年連続のポストシーズン進出を決めた。

 歴史的な1日で偉業を達成する試合開始の2時間40分ほど前。大谷はロッカー近くにある狭い部屋の一室で、クレイトン・マッカロー一塁コーチと肩を並べてパソコンを食い入るように見ていた。相手投手の映像だ。

 クイックは速いのか―。けん制は速いのか―。けん制をする時、しない時の癖はないか―。相手捕手の肩の強さは―。映像とにらめっこし、タブレットでデータも見ながらこの日、走れるかどうかを頭に描く。この時点で勝負はほぼ決まる。

 マッカローコーチは、相手捕手が平均的な肩の強さの場合と限定し、こう明かしてくれた。「(投手のモーションに入って捕手が捕球するまでの)クイックの時間は1・4秒あれば(走れる野手なら)行けると判断する。でも、翔平の安全圏は1・3秒ぐらい。当然、相手のけん制がうまければリードが取れないから、その分タイムはもう少し遅くなるし、捕手の肩もあるし、野手のタッチの速さもある。一概には言えないけど」。

 今季の大谷は、打者専念のシーズン。投手としてリハビリはあるが、相手打者の研究やバッテリーミーティングなどはない。今まで投手に費やした時間を、攻撃の準備に充てられる。毎日、マッカローコーチと話し、相手投手を分析する。そして「確実に行ける」との判断のもと大谷はスタートを切る。「自信がある時しか行かない」。51盗塁を決めて失敗はわずか4つ。28回連続成功で、成功率は92・7%を誇る。

 同コーチは「毎日、自分が分析した投手の情報について翔平と話して、その後、ビデオを見ながらこれは行ける、これは行けないと議論する。本当に翔平はビデオを見るのが好き。だからこれだけ走れるんだ」。

 ロバーツ監督はこの2人の関係が、大谷の盗塁の進化につながったと考える。「クレイトンと翔平は本当にいい関係を築いている。翔平は、単に足の速い選手から、盗塁を奪える選手(スティーラー)に変わった。DHでこれだけ打てるのはすごいが、自分の中での驚きは翔平がこんなに走り続けたことだ」。前人未到の「50―50」達成は、走ることへの意欲と緻密な分析、準備から生まれた。 (阿部太郎)